●すでに両者とも五輪出場権を獲得した後の決勝戦だが、日韓戦になったこともあって注目度の高い試合になった。なにしろ(すっかり忘れていたが)ロンドン五輪は3位決定戦が日韓戦になってしまい、これにニッポンは負けて銅メダルを逃したのだった(あの試合、韓国U23は銅メダルと兵役免除を賭けて戦っていた)。で、手倉森監督は前の試合にあえてベンチに置いた岩波をセンターバックに復帰させ、中盤を遠藤、大島、中島、矢島で構成した(南野は準決勝終了後に所属のザルツブルクに帰った。しかも即フル出場したとか。この大会はインターナショナルAマッチに該当しないので、もともと所属クラブ側に選手を供出する義務はない)。2トップは久保とオナイウ。鈴木武蔵がやはりケガで使えないようで、代役にオナイウ。結局、浅野は一度も先発に起用されないことになってしまったが、セットプレイ時のディフェンスなども考えると、ここにはどうしてもフィジカルの強い選手を置きたいということなのか。GK:櫛引-DF:室屋、植田、岩波、山中-MF:遠藤航、大島(→浅野)、矢島(→豊川)、中島-FW:久保、オナイウ阿道(→原川)。
●さすがに韓国は鍛えられている。もともとパワーや個の突破力などは高い印象だが、このチームは足元の技術が非常に高くて、パスをつないで相手ディフェンスを崩してくる。逆にニッポンのほうが守りから攻めへの展開を速くしようとする意識が強くて、ゴールに直結するパスを狙う形が目立つ。前半はこの狙いがうまく機能せず、結果的に韓国のボールキープが長くなる苦しい展開に。前半20分、韓国が左サイドを深くえぐってクロスを入れ、中で頭で落としたところにクォン・チャンフンが倒れこみながらボレー、これが不運にもディフェンスに当たってコースが変わってゴール。当たらなければ櫛引が問題なくセーブできたコースだったのでツキがないといえばないが、一方でしっかりと守備を崩された感もあって、やっぱりここまでの相手とはクォリティが違う。韓国はときどき両サイドバックが高い位置をとって、代わりにボランチの選手がセンターバックふたりの間に入って3バックみたいな布陣で攻めてくるのが特徴的。
●後半開始早々から、ニッポンはトップのオナイウを下げて中盤の原川を投入。この手倉森采配がものの見事に失敗する。オナイウでは前線にボールが収まらない。だったら苦しい中盤を厚くしてしまおうということで、3ボランチにして(あるいは遠藤をアンカー気味に下げて?)4-3-2-1(あるいは4-3-3)の布陣を取る。理屈の上では納得の采配だと思うのだが、後半2分、韓国は細かいパス交換から右サイドを攻め上がり抜け出したイ・チャンミンから中央へ。これを受けたのチン・ソンウが見事な反転から左足でゴールに叩き込んで2対0。3ボランチにしてすぐに2点差になってしまった。こうなるとニッポンは冷静さを欠き、さらに守勢に回ることに。韓国に3点目が生まれかねない勢いだったが、後半15分、中盤の大島を下げて前線の浅野を投入してふたたび2トップに。後半22分、矢島のスルーパスに浅野が猛スピードで抜け出して、落ち着いてゴール右隅に決めて一点差に。その1分後、左サイドからのクロスに中央に走りこんだ矢島が頭で合わせてまさかの同点ゴール。圧倒的な劣勢に立たされていたはずが、たった2分で追いついてしまった。どちらも韓国のディフェンスが振り切られての失点。後半が進むにつれて、ニッポンのコンディション面での優位が目に付くようになってきた。
●後半36分はニッポンのカウンター。中島から浅野へのパスに対して、浅野がまたもスピードを生かしてラインの裏へと抜け出し、キーパーとの一対一に。これを落ち着いてゴール右隅に流し込んでよもやの逆転。2点差をひっくり返してしまった。喜ぶ浅野はジャガー・ポーズでゴール・セレブレーション。ガオー!と笑顔で咆哮。韓国は足が止まり、ここから有効な反撃をすることができず、ニッポンが3対2で勝利した。アジアの大会で優勝するのはいつ以来だっけ。やはり優勝できると気分はいい。
●この韓国戦が最たるものだけど、今回のニッポンは試合の終盤に強かった。やはりグループリーグから選手を大胆にローテーションして、コンディション面で優位に立てたのが効いていたんだと思う。浅野をずっと先発させなかったのも成功。正直、チームの地力は韓国のほうが高かったと思うが、大会を通じた戦い方でニッポンが上回った感。手倉森監督は勝負師だなあと思う。岡田武史監督をほうふつとさせる。
February 1, 2016