●ある曲の音源を聴こうと思って配信サービスで検索したところ、たまたまマーキュリー・リヴィング・プレゼンスの音源がヒットして聴いてみたのだが、やはりこのレーベルのサウンドは独特だと感じる。ステレオ初期の古い録音なのに、ものすごくシャープでクリア。あまりにすっきりと整理された音で、かえって落ち着かなくなるくらい。
●ところで、この Mercury Living Presence という言葉の由来はどれくらい知られているものなんだろうか。ワタシはつい先日知った。アレックス・ロスの「これを聴け」(みすず書房)をぱらぱらと眺めていたら、こう書いてあった。
ハワード・トーブマンはマーキュリー・レーベルのLPレコードについてこう書いた。「オーケストラの音はとても真に迫っているので、生きた存在を聴いているように感じるのである」(マーキュリーはすぐに「生きた存在」[リヴィング・プレゼンス]をそのスローガンとして採用した)。(p.87)
あ、そういう意味だったんだ、リヴィング・プレゼンスって。ハワード・トーブマンはニューヨーク・タイムズなどで批評を書いていた人。批評文をチラシなどの宣伝に使うのは今でもよくあることだが、これがあのジャケットに印刷され続けてきた Mercury Living Presence の由来だったとは。
●ところで、マーキュリーよりもさらによく目にしてきたのは、RCAのリヴィング・ステレオのほうだと思う。こちらはマーキュリーほどには特徴的なサウンドと感じないものの、Living Stereoのロゴ・デザインはとても秀逸で、今見てもカッコいい。意味合いとしてはリヴィング・プレゼンスと同様、生々しいステレオ録音ということなんだろう。
●で、リヴィング・プレゼンスとリヴィング・ステレオはどっちが先なんすかね。先のエピソードを考えるとリヴィング・プレゼンスは偶発的に生まれたキャッチということになるが、じゃあリヴィング・ステレオはリヴィング・プレゼンスの二番煎じみたいなキャッチなのだろうか。それともなに別の由来があるの?