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February 26, 2016

知られざる作品を広める会~アレンスキー没後110年記念コンサート

●25日はロシアの作曲家アントン・アレンスキーの命日。没後110年記念コンサートとして、杉並公会堂小ホールで午後の部/夜の部と2公演にわたって、アレンスキーのピアノ作品が演奏された。主催は「知られざる作品を広める会」。これは谷戸基岩さんが2002年以来、開催しているコンサートで、今回で10回目を迎える。以前、第8回のアルカン生誕200周年コンサートを当欄でご紹介したことがあったけど、演奏機会が少ない(あるいはほぼない)知られざる作品を取り上げてくれる。
●今回のアレンスキーは午後の部のみを聴いた。プログラムは「24の性格的小品」op36の前半(後半は夜の部に演奏された)、カノン形式の6つの小品op1、フゲッタ ニ短調、3つの小品op19、雑記帳op20、6つの小品op5。上野優子、内門卓也、山本恵利花、石岡千弘、4人のピアニストによる演奏。どれも初めて聴く曲ばかりだったが、それぞれ真摯な演奏で作品の魅力を伝えてくれた。っていうかアレンスキーというだけでも聴く機会は少ないのに、さらにそのなかでも録音もないような作品がたくさんあって、谷戸さんですら試演会でようやく初めて聴けたみたいな曲があるという、まったくもって未知との遭遇。これは得難い体験。
●で、どれも小品なので、作品としてはサロン的な雰囲気の曲が多いんだけど、一見つるんとした容貌を見せながらも、ところどころに意表を突くような曲があるのがおもしろい。谷戸さんの解説によれば、作曲者生前の一番の人気作だったのは、6つの小品op5の第5曲「バッソ・オスティナート」(でも今では編曲バージョンを除いて録音がひとつもない)。5拍子好きのアレンスキーは作品5の第5曲に5拍子の曲を書いた。でも左手のバスは6拍子で右手のメロディが5拍子みたいな迷子になるような曲。変な人だなあ。この曲を別にすると、もう一度聴いてみたい度が強いのは、多様性に富んだ「24の性格的小品」かな。前半しか聴いていないわけだけど……。帰宅してから気になって、NML, Apple Music, Google Play Musicを一通り検索してみたが、ごくわずかな抜粋のみ。
●ひとつ惜しいのはこの会のウェブサイトがないこと。検索エンジンが拾ってくれるように、せめてこれまでの演奏記録と、プログラムのPDFだけでも置いてあれば、知られざる作品を広めるという趣旨からいって、ものすごく有効だと思うんだけど、どうなんでしょう。