●BSスカパー!の番組「FC今治の挑戦」がおもしろい(ネット上でも無料で視聴可)。元日本代表監督の岡田武史が四国リーグに所属するFC今治のオーナーになって、将来のJリーグ入りを目指している。四国リーグっていうのは、J1、J2、J3、JFLの一つ下の地域リーグ(このカテゴリーになると全国リーグではなく、地域ごとのリーグ戦になる)。つまり5部リーグということになる。
●ここに岡田武史オーナー(株式の過半を取得したのだとか)、さらには吉武博文、大木武といったニッポン代表クラスの指導者たちが理想のサッカーを目指して集まった。理想の戦術メソッドを構築し、強くて、しかも見ていておもしろいチームを作る。5部だから選手たちはアマチュア。スポンサーから大金をもらって上の選手を買って勝つといった無意味な戦い方はしていない。岡田武史オーナーのフットボール理念を現実の形にするためのクラブというか。選ばれし人だけが身銭を切って挑戦できるリアル「サカつく」。
●この今治FCだが、もともと四国リーグでは強豪である。昨年はめでたく優勝を果たした。で、JFL昇格への挑戦権を手にしたわけだが、昇格を賭けて臨んだ全国地域サッカーリーグ決勝大会で、1次ラウンドで早々に敗退してしまった。この全国地域サッカーリーグ決勝大会っていうのが、ホントに過酷な大会なんすよね。JFL昇格は、ほかのどのカテゴリーの昇格よりも厳しいのでは。だって、金土日で3日連続の3連戦で戦うんすよ! プレミアリーグが牧歌的に見えるような超過密日程。なにせ選手たちはアマチュアで仕事もあるわけで、セントラル方式で週末に集中開催するしかない。参加12チーム中昨年は2チームがJFLに昇格を果たした。なんというか、技術とか戦術以外の部分、タフネスとか時の運で勝負が決まる大会という印象だ。逆に言えば、JFLのチームにとって、もしひとたび地域リーグに降格してしまうと、次に戻ってくるのは至難の業。
●おもしろかったのは、FC今治がこの地獄の3日連続3連戦で選手をローテーションさせたこと。第1戦で辛勝すると、第2戦で大幅に選手を入れ替えた。これって、選手層の厚いニッポン代表とかビッグクラブがやるような戦い方じゃないすか。普通、5部リーグのチームはそんな戦い方はしないというか、できないと思う。ド根性肉弾戦で3連戦をボロボロになりながら戦いそうなもの。で、この策が奏功せず、FC今治は敗退してしまった。だからローテーションがダメだというのはただの結果論であって、この戦い方が合理的なのかどうかはなんともいえない。
●四国では容易にゲームの主導権を握れるFC今治が、全国大会に出ると、普段は戦わないような手強い対戦相手が続々出てきて苦戦するというのも、当然といえば当然なんだけど、サッカーのおもしろさがあらわれていると思う。この決勝大会のさらに上にいるのがJFLのチーム、つまり横河武蔵野FCみたいなチームなわけだ。JFLとかJ3といったカテゴリーがどれだけ上位にあることか。ここから見ると、J2なんて化け物集団、J1は神々の世界みたいな感じになる(JFLを見慣れている自分としてはもともとそういう認識なんだけど)。
●ところがテレビでJ1の中継とか見ると、「あーあ、イングランドとかスペインに比べるとレベル低いよな~」的なサカヲタ視点がむくむくと湧いてくるのを止められない。もうこれこそファンの身勝手さ。J1は神々の世界じゃなかったのかよ!
March 2, 2016