●12日はトッパンホールで北村朋幹リサイタル。いつもながら、プログラムが凝っている。前半はベートーヴェンの6つのバガテル op126、シェーンベルクの6つの小さなピアノ曲 op19、ブラームスの幻想曲集op.116、後半にリストの悲しみのゴンドラ第1とブラームスのピアノ・ソナタ第3番。
●前半はミニチュア的な作品の集積で、なんというか、円熟したピアニストがアンコールにでも弾きそうな曲が集まっていて、25歳の若者が弾くものとは思えない。でもこれがなんとも詩情にあふれて味わい深い。特にシェーンベルクの語り口の豊かさ(官能性、ユーモア、瞑想的)が印象的。後半は趣が変わるが、どちらもフォンテックからリリースされた最新アルバム「黄昏に ブラームス、リスト、ベルク作品集」に収録されている曲。25歳で出すアルバムが「黄昏に」。爺さんになったらどうするの!? と一瞬思うが、これはブラームスからリスト、ベルクへと至る「ロマン派音楽の黄昏」というコンセプトなのだった。
●ブラームスのピアノ・ソナタ第3番って20歳の若者が書いた曲なんすよね。全5楽章からなる大作にして野心作。はるか遠くに交響曲を予見させるという以上に、むしろシューマンのエコーが聞こえてくる。「クライスレリアーナ」とか「幻想曲」の向こうにある「超シューマン」。前半が小さな閉じた世界の集合体だとすれば、後半は過去にも未来にも開けた世界を堪能したという感。熱狂しながらも端正なフィナーレも見事。アンコールは2曲。ショパンのマズルカ第13番イ短調op17-4 とモンポウの「歌と踊り」より第1番。最後、モンポウだったとは。
April 13, 2016