●18日はクリスチャン・ヤルヴィ指揮都響へ(サントリーホール)。指揮者一家ヤルヴィ家から父ネーメ、兄パーヴォと来てさらに弟クリスチャンも大活躍中。というか、3人ともしょっちゅう日本に来ているような気が。以前、ネーメとパーヴォが東京で同時期に来日していたことがあったけど、今回はネーメがN響定期のために来日中。客席にはネーメの姿もあったとか。いつも東京で家族に出くわす指揮者一家って。
●で、ヤルヴィ家のなかではいちばんハジけたプログラムを披露してくれるクリスチャン。前半がペルトで「フラトレス~弦楽オーケストラとパーカッションのための」と交響曲第3番、後半がライヒで「デュエット~2つの独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための」「フォー・セクションズ」(日本初演だとか)という20世紀後半プロ。ヤルヴィ家にとってはペルトは母国エストニアの作曲家であり、親交が深い。一方、8歳からニューヨーカーとして育ったクリスチャンにとって、ライヒらのミニマル・ミュージックはもう一つの自国の音楽でもあるわけで、これは必然の組合せ。
●いろんな楽器編成のバージョンが用意されていることもあってか、ペルトの「フラトレス」は最初のペルト・ブーム以来継続的に演奏されている人気曲。静かで反復的な瞑想のひととき。これに比べると、より以前に書かれた交響曲第3番(1971)は過渡期の作品といった感じで、聖歌や瞑想にモダンもロマンも混在しているというごった煮のおもしろさがある。もっとも交響曲という長さと大きさがかえって足枷になっているような気もしなくはなし。後半はぐっと開放的な雰囲気で、痛快。「デュエット」の弦楽合奏はヴァイオリン抜きなので、舞台下手側だけに奏者たちが陣取り、これにふたりの独奏者が加わるという視覚的なアンバランスさも新鮮。「フォー・セクションズ」は、弦、木管、金管、打の4つのセクションを群として扱い、最後は全セクションで躍動感あふれるクライマックスを築く。フルサイズのオケを扱うにしてもジョン・アダムズのゴージャスさとは違った発想なのが楽しい。
May 19, 2016