June 7, 2016

ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団のブルックナー、實川風ピアノ・リサイタル

●3日はサントリーホールでヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団。前半にシベリウスの交響詩「フィンランディア」と武満徹の「ノスタルジア アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」(独奏:五嶋龍)、後半にブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」というバラエティに富んだプログラム。明るい音色、強力なブラス・セクション、そしてネゼ=セガンの伸びやかな音楽を堪能。特にブルックナーが新鮮。ぜんぜんドイツ的ではない。ネゼ=セガンが描き出すのは鬱蒼とした森ではなく、スカッと晴れわたる青空のようなブルックナー。健やかで歌心にあふれた、さわやかさんなブルックナーがありうると知る。ときおり、えっ、そこを強調するの?みたいな違和感があったり、歌い回しに過剰さを感じることもあるんだけど、独自のスタイルに一貫性が感じられて説得力大。終楽章は壮麗で、オーケストラに100%力を出し尽くしたという充実感がみなぎっていた(ような気がする)。とりとめのないプログラムかと思ったけど、3曲に一貫するのは無国籍性だったのかも。フィンランド的、日本的、ドイツ的であることからの自由さ。
●4日は渋谷のさくらホールで實川風ピアノ・リサイタル。2015年ロン・ティボー・クレスパン国際コンクール第3位の新鋭。「風」って書いて「かおる」って読むんすよ(男性です)。う、美しすぎる。しかも名前だけじゃなくて本人もカッコいい。全席完売。プログラムがずいぶん多彩で、ショパン、ベートーヴェン、ヌーブルジェ、ビゼー、ドビュッシー、リストの作品が並ぶ。作曲家としてよりもピアニストとしてもおなじみのジャン=フレデリック・ヌーブルジェの作品は「メリーゴーランドの光~ピアノのためのタンゴ」で、前述のコンクールの課題曲。どれも大いに聴きごたえがあったが、特にベートーヴェンの「ワルトシュタイン」に圧倒される。集中度が高く、堂々たる本格派。端然と彫琢された音楽の形を崩すことなく、豊かなパッションが注ぎこまれているのがすばらしい。超越的なリスト「ダンテを読んで─ソナタ風幻想曲─」にも引き込まれた。アンコール数曲。ぜひまた聴きたいピアニスト。

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