June 9, 2016

METライブビューイングの「エレクトラ」と来シーズン

●6日はMETライブビューイングでR・シュトラウスの「エレクトラ」。今シーズン最後の演目。サロネン指揮、パトリス・シェロー演出。ニーナ・ステンメ、ヴァルトラウト・マイヤー、エイドリアン・ピエチョンカら歌手陣充実。もう明日(金)で上演が終わってしまうんだけど、これは強烈。ニーナ・ステンメの怪女っぷりがすごい。2時間弱、休憩なしで見やすいといえば見やすいが、休憩がないのでライブビューイング名物の幕間インタビュー等はなし。ダークグレーをベースとした簡素な舞台で、現代風の衣装を着た登場人物がどこでもない場所の物語として演じる「エレクトラ」。シェローの緊張度の高い凝縮された演出ではあるんだけど、気分はすっかり映画館モードなので(カップホルダーに飲み物を置くと一気にそうなる)むしろウルトラ長大な交響詩が作り出す響きの芸術に身を浸すといった気分に。
●で、来シーズンのラインナップが発表されている。第1作が「トリスタンとイゾルデ」新演出。ラトル指揮というのがびっくり。ここでもニーナ・ステンメが登場、イゾルデを歌う。トリスタンはスチュアート・スケルトン。こういった体力の要るものこそ映画館が向いていると思うのだが(カップホルダーあるし)、マリウシュ・トレリンスキの演出がどう出るか。過去にMETライブビューイングではチャイコフスキー「イオランタ」&バルトーク「青ひげ公の城」のダブル・ビルがこの人だったっけ。あのときはイオランタのハッピーエンドの後日譚を「青ひげ公の城」のユディットに見るという鋭く暗い視点があったのだが、「トリスタンとイゾルデ」でもなにか驚きがあるんだろうか。
●あと第3作がサーリアホの「遥かなる愛」。東京オペラシティの「コンポージアム2015」で演奏会形式で上演されている。コンポージアムとMETで同じ演目が上演されるとは。指揮はスザンナ・マルッキ。演出はロベール・ルパージュなので、視覚的には引きの強い舞台になりそう。ストーリーはむしろMET向きというか、「トリスタンとイゾルデ」と共鳴するところ大だが、音楽的には集中して聴き続けるのは容易ではないはずなので、はたして客席の反応はどうなることやら。

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