●いよいよ決勝トーナメントに突入したEURO2016。本当の戦いはここから。延長PK戦のケースも出てくる。さすがに全試合をじっくり見ることはできないのだが、メモ程度でも記録しておこう。
●まずはスイスvsポーランド。ポーランドにはレヴァンドフスキという絶対的なエース・ストライカーがいるのだが、そのレヴァンドフスキのプレイに無理な体勢からのシュートなど、焦りを感じる。39分、コーナーキックの守備からポーランドがカウンターで逆襲。左サイドを突破したグロシツキのクロスに中でブワシュチコフスキが合わせて先制ゴール。堅守のポーランドだけにこれで試合が決まってもおかしくなかったが、後半37分、スイスに今大会随一のスーパー・ゴールが飛び出す。決めたのはシャチリ。ゴール前でのやや後方への浮き球に対して、戻りながら斜めひねり回転オーバーヘッドシュートとでも呼ぶようなアクロバティックすぎるキックで、見事にゴールに突き刺した。これは伝説だ。ついに生まれた今大会初の(もしかしたら唯一の)伝説。1対1の同点に。
●語り草となるゴールが生まれたのだから、これでスイスが逆転するというのが筋というもの。ところが、そのまま延長戦に入り、それでも決まらずPK戦に。スイスはジャカが失敗し、ポーランドは全員決めた。ポーランドが初のベスト8へ。せっかくの伝説のゴールが……。スイス 1 (4PK5) 1 ポーランド。
●クロアチアvsポルトガルは一見強豪同士の戦いだが、スペインを倒して1位通過してきたクロアチアと、グループステージを3引き分けの勝点3でやっと通過したポルトガルでは立場が違う。前後半を通してクロアチアが約60%のボール支配率。これがイタリアだったら支配率4割は「戦略」のひとつだろうが、伝統的に細かいパスワークを身上とするポルトガルにとって4割は「劣勢」でしかない。攻めるクロアチアに対し、体を張って粘りの守りを続けるポルトガル。結果として90分で枠内シュートゼロの地味な試合に。延長後半、ポルトガルのカウンターから、左サイドに出たナニが逆サイドのクリスチャーノ・ロナウドにディフェンスの間を通してクロスを入れ、クリスチャーノ・ロナウドのシュートをキーパーが弾いたところに途中出場のクアレスマが頭でごっつぁんゴール。この場面が試合を通じて唯一ポルトガルが枠内シュートを打ったシーン。クォリティで上回ったのはクロアチアだったが、ポルトガルは勝負に勝った。
●クアレスマといえば若き日に鳴り物入りでバルセロナに入団したものの(独特のリズムを持った変態ドリブルが魅力だった)、その後鳴かず飛ばずで、トルコやUAEのクラブでプレイし、気がついたら32歳のベテランに。「期待はずれ」に終わった才人といった印象が強いが、今大会でヒーローになってくれないものだろうか。クロアチア 0-1 ポルトガル。
●ウェールズ対北アイルランド。ちょうどイギリスの国民投票で僅差でEU離脱派が勝利したという衝撃的なニュースがあった直後にこの試合。いっそのこと、EURO2016番外編で離脱派代表vs残留派代表で試合をしてはどうかと思っていたら、ウェールズ(離脱派)vs北アイルランド(残留派)が実現。この試合はハイライトしか見ていないのだが、スタジアム内にもEU離脱を巡るメッセージやチャントがあったようだ。報道によれば、北アイルランドのサポから「オレたちは残留に投票した。オレたちはバカじゃない」といったチャントも歌われたとか。しかし、試合は北アイルランドのオウンゴールが決勝点となってウェールズが勝利。暗示的というかなんというか、フットボール的には順当な結果なのだが……。ウェールズ 1-0 北アイルランド。
June 27, 2016