July 6, 2016

アレクサンダー・ロマノフスキー ピアノ・リサイタル

●5日は紀尾井ホールでアレクサンダー・ロマノフスキーのピアノ・リサイタル。前半がシューマンで「アラベスク」「トッカータ」「謝肉祭」の3曲、後半がムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。この組み合わせは少しおもしろいかも。タコ糸が切れて飛んで行ったような制御レスな人生を送ったふたりの作曲家を、若くしてすでに風格の漂う泰然としたピアニストが弾く図。シューマンも見事なんだけど、おもしろかったのは断然ムソルグスキー。冒頭プロムナードから「キエフの大門」に至るまでの起伏に富んだ大きなドラマを一気呵成に聴かせてしまう。色彩感が豊かで、ほとんど華麗なくらい。スリリングだけど、エレガント。もっとも客席の反応は前半のほうがよかったかも。短めのプログラムだったが、アンコールは5曲。ショパンの「革命」と遺作のノクターン、リスト、スクリャービン、バッハの「バディネリ」(編曲だれだっけ)。
ムソルグスキー●それにしても「展覧会の絵」って、本当に名曲だと思う。生前になぜ成功を収めなかったんだろう。土の香りがするようで都会的なようで、リリカルでいてコミカルで、と二律背反的な要素が絶妙に混ぜ合わさっている。こんなに原曲が魅力的なのに、よってたかってみんながオーケストラ用に編曲したくなるという現象もおもしろい。これだけの曲が書けるなら、ムソルグスキーはもっとピアノ曲を書いてくれればよかったのに。いや、ほかにも性格的小品みたいなのはいくつもあることはあるんだけど……。士官学校を出たムソルグスキーに出会ったボロディンは彼のことを「優雅にピアノを弾くディレッタント」と評したそうだけど、そこからどれだけ荒ぶるとああなるのやら。

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