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July 14, 2016

EURO 2016を総括する

●閉幕するとあっという間に過去のことになってしまうが、忘れないうちにEURO 2016を総括しておかねば。とてもいい大会になったのでは。
●まず優勝したポルトガルについて。従来、細かなパスをつないでポゼッションを重視するというのがポルトガルのスタイルだったが、今大会は慎重で守備的な戦いをするチームになっていた。逆説的だが、守備的なチームにこそ決定力のあるスーパースターが有効ともいえる。ほとんどの好機はカウンターとセットプレイなので。
●ベストの試合はイタリア対スペイン。前回チャンピオン相手にイタリアが猛烈に攻めまくった。痛快。好感度ナンバーワンのチームはウェールズ。最大の番狂わせはイングランド対アイスランド。イングランドは「プロサッカー選手が火山の数より少ない国に負けた」と揶揄された。
●大会方式について。今回から24か国に参加国が増え、グループステージ3位でも多くの場合、決勝トーナメントに進めるようになった。ポルトガルだって3位通過だ。そんなの変だよっていう声が一部の選手から上がっていたのが印象的。だって、これってフランス大会より前のワールドカップの方式そのものじゃん。おなじみの方式が復活しただけと思っていたら、若い選手たちにとっては「は、なにそれ?」くらいの感じなのか。たしかに言われてみれば、ヘンだよなあ。もっとエレガントな方式はないの?
センターサークル●今回から「ひとりキックオフ」を多くのチームが採用するようになった。これはサッカーのルールが変わったから。従来、キックオフは前方向に蹴らなければならなかった。そのため、どのチームもボールのそばに2人を選手を立たせて、ひとりが前にチョン蹴りして、もうひとりがバックパスで味方につなぐというキックオフをしていたわけだ。ところが、今後はキックオフでどの方向に蹴ってもよくなったので、ひとりキックオフでバックパスをすればOK。どうせバックパスをするとわかりきっているのに、なぜ従来はそんな儀式的なチョン蹴りをしていたのかと思う。割と恥ずかしいので小声で言うけど、ワタシは草サッカーで初めてフォワードのポジションをやらせてもらったとき、この前に蹴るっていうルールを知らなくて、いきなりバックパスをしてしまって叱られたのであった……。うっかり未来のルールを先取りしていたぜー。
●あと、さすがEURO、主審の質が高い。「審判が試合を決めてしまった」みたいな印象が残った試合がひとつもなかった。エキサイトしないし、主役になろうともしない。うらやましすぎる。それともうひとつ、ゴールキーパーの質もアジアとは段違い。悔しいけれど。
●最後に、代表チームのおもしろさについて。プレイの質だったら、代表チームよりもヨーロッパ・チャンピオンズリーグのほうがはっきりと高い。チャンピオンズリーグで優勝を争うビッグクラブでは、先発からベンチまでスター選手がずらりと並ぶ。代表チームだと、ビッグクラブの選手もいればトルコやメキシコでプレイしている選手もいて、まだら模様になっている。それでも代表チームのほうが見る甲斐があると思えるのは、ずばり、代表はお金の力で補強ができないから。このチーム、左サイドバックが弱いんだよねと思っても、じゃあいい選手を買おう、というわけにはいかない。なんで左サイドバックが弱いかというと、そもそも利き足が左の走力のある選手が国全体に不足しているから、これはジュニア世代から補強しないとなあ……みたいな話まで遡ることになって、いつか補強できるかもしれないし、できないかもしれない。マネーゲームにはマネーゲームのおもしろさがあることを否定しないが、長期育成ゲームには夢がある。