●5日はミューザ川崎のフェスタサマーミューザKAWASAKI 2016で川瀬賢太郎指揮神奈川フィル。この音楽祭ではときどきある平日昼の公演。さすがに客席は空くが、その代わり日ごろ夜や週末の公演に足を運びにくい人たちには貴重な設定になっている……と願う。プログラムは前半がモーツァルトで「フィガロの結婚」序曲とヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲(﨑谷直人、大島亮)、後半がリヒャルト・シュトラウスの歌曲集(髙橋維)で「明日には!」「万霊節」他、「ばらの騎士」組曲。モーツァルトへのオマージュ・プロ。
●指揮者のみならずオーケストラも全般に若々しくフレッシュ。よもや「フィガロの結婚」序曲で指揮台からジャンプする指揮を目にしようとは。とはいえ、これは終盤のティンパニの強打をうんと強調したことへの視覚的なガイドみたいな効果もあって、明快であり楽しくもあり。協奏交響曲は奇跡の名曲。対話性に富んだソロが見事。うまくて、清新。後半の「ばらの騎士」でも思い切りのよい指揮ぶりが炸裂。本編でさんざん盛り上げておいて、アンコールで曲のおしまいの部分をもう一度、今度はさらに大胆に表情をつけて煽り立てる演出が心憎い。オーケストラは精密なんだけど、かなり上品というかさっぱりしたサウンドなので、これくらいのヤンチャ成分が注入されてバランスがとれるのかも。
●神奈川フィルは横浜を本拠とするオーケストラで、一方ミューザ川崎を本拠とするのは東京交響楽団。川崎にとっての神奈川フィルの地元感とか、神奈川フィルから見たミューザ川崎の地元感ってどれくらいあるんだろうか。外から見るとよくわからん、と一瞬思ったが、マリノスとフロンターレの関係と理解すればいいのかと思い当たった。
August 8, 2016