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August 10, 2016

映画「ストリートオーケストラ」(セルジオ・マシャード監督)

映画「ストリートオーケストラ」●8月13日より公開される映画「ストリートオーケストラ」(セルジオ・マシャード監督)。一足先にプレス試写で見た。実話を題材とした映画で、背景にあるストーリーはこう。スラム街で荒んだ暮らしをする子供たちが、楽器を手にして、やがてエリオポリス交響楽団が誕生する……というと、ベネズエラの「エル・システマ」を思い出すが、こちらはブラジル、サンパウロでのお話。ブラジル版「エル・システマ」とでもいうべきか。
●で、映画で焦点があてられるのは、オーケストラ設立の話ではなく、そのもっと前の段階。主人公はヴァイオリニストで、サンパウロ交響楽団(これはブラジルの名門オケ)のオーディションに落ちてしまう。生活のためにやむをえずファヴェーラ(スラム街)の学校で音楽教師をすることを引き受ける。行ってるみると、そこにいるのは楽器の持ち方も知らないガキどもで、授業中でもスナック菓子を買うわ携帯で話すわと無法地帯。一方にサンパウロ交響楽団のエリートの世界があり、一方でギャングが支配するスラムの世界がある。そんなブラジルの階層社会を背景に、主人公と子供たちの交流が描かれる。
●本当の意味での主役は子供たちで、やっぱりファヴェーラだから普通の家庭環境じゃぜんぜんない。そんななかで子供たちなりに必死に生きている姿が心を動かす。(以下、多少話の筋に触れます)。この映画でいちばん好感を持てたのは、都合のよい希望と感動の物語にまとめていないところ。こういうのってどうしても前宣伝なんかでは「感動実話」に閉じ込められてしまいがちだけど、この映画そのものは音楽が世界を救うみたいなことはちっとも言ってない。だって、話の結末がそう。ファヴェーラの子供たちはファヴェーラから抜け出せないし、主人公のヴァイオリニストはエリートの道に戻って願いをかなえる。むしろ厳しい階層社会の現実を直視したのがこの映画で、ふわふわした音楽の夢なんかに頼っていない。
●クラヲタ向けポイントとしては、サンパウロ交響楽団の首席指揮者マーリン・オルソップが出演しているところ。指揮をしているだけではなく、主人公とセリフのやり取りもワンシーンだけあってびっくり。