●8月下旬に入り、コンサートは夏のオフシーズン・モードが終了、これから一気に秋のハイシーズンへ。23日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグ指揮読響のリヒャルト・シュトラウス・プロ。交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、4つの最後の歌(ソプラノはエルザ・ファン・デン・ヘーヴァー)、家庭交響曲の満腹コース。鳴りっぷりのよい音の饗宴を楽しむ。流麗精緻な響きの芸術というよりは、語り口の豊かなシュトラウスというべきか。「ティル・オイレンシュピーゲル」の冒頭、「むかしむかしあるところに……」でニュアンス豊かな柔らかい弦楽器を聴かせ、本編ではティルがヤンチャにあばれて説話の型をはっきり伝える。ヘーヴァーの声はまろやか。「家庭交響曲」は爽快。コンサートマスターは日下紗矢子さんで、絶品のソロ。
●「ティル」も「家庭交響曲」もざっくり言えば「ほら話」なんだと感じる。音響としてはカッコいいんだけど、話の中身はそんなに垢抜けたものじゃなくて、「ドン・ファン」でも「英雄の生涯」でもおおむねみんなそうなんだけど、赤ら顔のおっさんが話を盛っている感が楽しいというか。自分のなかでのシュトラウス作品の分類は、ひとつは「ほら話」系で、もうひとつは「おとぎ話」系。後者の系譜は「ばらの騎士」「アラベラ」「影のない女」等々。散々「ほら話」をやりつくしたら「おとぎ話」をしたくなった、みたいなイメージ。「サロメ」は「おとぎ話」の形をした「ほら話」かな。境目は笑いの要素で、「7つのヴェールの踊り」は笑う場所だと思う。
August 24, 2016