●1日は浜離宮朝日ホールで反田恭平リサイタル。30日からそれぞれプログラムの異なる3夜連続のリサイタルを開催。それだけでもスゴいのだが、さらに追加公演として9月7日、8日、9日ともう一周3夜連続で開催されるという大変な人気ぶり。同一ホールで計3プログラム6公演のリサイタルとは。
●3夜連続のリサイタルはそれぞれドイツ、フランス、ロシアとテーマが掲げられており、この日はロシア。スクリャービンの幻想曲ロ短調、ラフマニノフの絵画的練習曲より第1番ハ短調、第9番ニ長調、グリーグ「トロルドハウゲンの婚礼の日」、チャイコフスキー 「四季」より「7月」~「12月」、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番。強烈なヴィルトゥオジティを堪能。切れ味鋭く鮮烈。以前よりさらにパワーアップしている感、大あり。ラフマニノフが圧巻だった。ラフマニノフって「メカニックはすごいけど退屈」と感じることもあるんだけど、まったくそうはならずにスリリングで、起伏に富んでいる。ソナタ第2番の第3楽章(ラヴェルの「ラ・ヴァルス」みたいに聞こえる曲)の冒頭、あまりにテンションの高い入り方で痛快。すばらしい。
●で、この日は反田さんの22歳の誕生日だった(そんなに若かったんだ……)。そんなこともあって、シリアスな本編の後は、サプライズでバースデーケーキが舞台上に運ばれ、客席みんなで「ハッピーバースデー」を歌う「ファンの夕べ」みたいな雰囲気に。で、ここで主催側からスペシャルな案内が。なんと、アンコールの一曲目に限って、客席から写真撮影がオッケーになったんである。シャッター音もフラッシュもオッケー。一曲だけだから、みんなお互いに許しましょうという大胆な試み。反田さんのあいさつの間にワタシも上の写真を撮ったわけだが、この後、リストの「葬送」が演奏され、会場中でありとあらゆる種類のシャッター音と光が共演することになった。カシャッ! ピッ! ピピピピッ! スマホのシャッター音ってこんなにいろんな種類があるんだ。これは壮観。リストとシャッター音が組み合わさって、もはや別の音響作品が誕生したんじゃないかと思うほど。眉をひそめる人もいることはだれもが承知しているだろうが、多くのファンが大喜びしたことはまちがいない。アンコールの2曲目は、シューマン~リスト「献呈」。こちらはみんなスマホをしまって、シリアスモードに無事に復帰できた。
●さらにもうひとつ特筆すべきは、終演後にその日の前半の演奏をCDに収録したものをプログラムノート(反田さんのカラー写真満載)購入者に配布していたこと。撮影OKの件といい、ファンサービスが徹底している。わざわざ足を運んでくれるお客さんが、どうやったら喜んでくれるだろうか、ということについて考え抜かれている。
●せいぜいアンコールの曲名をつぶやくだけの寡黙すぎるリサイタルが普通だと思い込んでいる自分もどうか、とは思った。
September 6, 2016