●8日はNHKホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮のマーラー「一千人の交響曲」。定期演奏会とは別にN響90周年記念特別演奏会として一公演だけ開催されたもので(もったいない気もする)、節目の年を祝うにふさわしく超巨大編成の作品がとりあげられた。なんだけど、パーヴォ・ヤルヴィが描いたのは巨大であることを拒むような、引きしまったサウンドできびきびと音楽が運ばれる高解像度マーラー。目指すべき音像は一千人の交響曲というよりは百人の交響曲、あるいはひょっとすると十人の交響曲(笑)じゃないかというような高純度アンサンブル。これほどクリアで明快な「千人」を聴けるとは。一方、贅肉はなくても筋肉はムキムキ。大オーケストラと大合唱団にオルガンや2階席後方のバンダも加わって作り出す音圧はすさまじい。
●独唱陣がすばらしすぎる。ソプラノのエリン・ウォール、アンジェラ・ミード(METの映画「オーディション」で出てたあの人。ついに実演で聴けた)、クラウディア・ボイル、アルトのカタリーナ・ダライマン、アンネリー・ペーボ、テノールのミヒャエル・シャーデ、バリトンのミヒャエル・ナジ、バスのアイン・アンガー。一夜の公演のためにこれだけそろった。銘々にNHKホールの巨大空間を己の声で制しようかという気迫。
●「千人の交響曲」はなかなか演奏できない曲のはずなんだけど、ここ最近、東京ではけっこうな頻度で演奏されてるのでは。ハーディング&新日フィル、ノット&東響、インバル&都響。同じNHKホールでデュトワ指揮N響もあった。来年は山田和樹指揮日フィルもあるそう。こんなに「千人の交響曲」が演奏されている都市はほかにあるだろうか。てか、どうしてなんでしょ。
September 9, 2016