●14日は東京オペラシティでハーゲン・クァルテット。「フーガの芸術~宇宙への旅路」と題され、前半にバッハの「フーガの技法」よりコントラプンクトゥス1~4、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番、後半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番「大フーガ」付きバージョン。「宇宙への旅」は謎としても、3曲を通して対位法の妙を聴かせるという好プログラム。前半のハイライトはコントラプンクトゥス4の終わりから、そのまままったく同じムードでショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番へとつなぎ目なく移行する瞬間だろう(一瞬、拍手が入りかけたが、切れ目なく続けた)。ショスタコーヴィチの静かな終わり方も含め、一貫して儀式的な厳かさ。そして、くりかえされるDSCH主題によるショスタコーヴィチ自分語り。この人、こんな半音階的な名前じゃなかったら、こんなに陰々滅々とした曲を書かずに済んだんだろうか(違う)。
●後半はベートーヴェン。何年も前にこのクァルテットを聴いた印象から、崖っぷちを全力疾走するみたいなエクストリーム・ベートーヴェンを予感していたのだが、そんなことはなかった。各々の奏者の雄弁さと、あたかもひとつの楽器のように調和する四重奏としての一体感が兼ね備わった、超越的なベートーヴェン。最後は鋭く峻厳な大フーガに圧倒されるばかり。密度高めの拍手、アンコールなしでキリッと終演。
September 15, 2016