October 13, 2016

ズービン・メータ指揮ウィーン・フィルの「グレイト」

●9日夜はミューザ川崎でズービン・メータ指揮ウィーン・フィル。モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」序曲、ドビュッシーの交響詩「海」、シューベルトの交響曲第8番(第9番)「グレイト」。いろいろな事情があって一日に読響とウィーン・フィルをはしごすることになってしまったのだが、なんと、「グレイト」が重なることに(そして、もし昼にノット&東響のほうに行っていたら、「海」が重なってた)。奇遇。カンブルランの刺激的な「グレイト」を聴いた後では、「老舗の味」は色褪せてしまうんじゃないかと案じたりもしたがこれはまったくの杞憂で、ぜんぜん別の方向で刺激的だった。
●弦は対向配置で、パーヴォやブロムシュテット、ノットが採用しているのと同様に下手にコントラバスを置き、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並ぶ。最近のメータはいつもそうなんだっけ? で、「ドン・ジョヴァンニ」序曲は、コーダが珍しいバージョンで、オペラ全体のエンディングにつながるものだった。プログラムノートにも特に記載がなかったのでびっくり。
●でもいちばん驚いたのは「グレイト」で、なんと、指揮者の周りを8人の木管楽器奏者たちがぐるりと囲むという配置になっていた。フルート、オーボエ、ファゴット、クラリネット各2名が並ぶ。協奏交響曲風というか。これが効果抜群。ウィーン・フィルの木管奏者たちの愉悦に満ちたアンサンブルをたっぷり味わえる。演奏中に奏者同士で笑みを交わすようなコミュニケーションもよく見えるのが吉。弦楽器は大編成で豊麗。オーケストラ全体としてはかなり緩やかな雰囲気で曲が始まって、どうなることかと思ったら、曲が進むにつれて集中度を増して、最後は白熱したクライマックスが築かれた。メータがオーケストラをドライブするというよりは、オーケストラに作品を預けて彼らが持っている音楽をうまく引き出してみせたといった感。これは彼らならでは。客席は大いに沸いた。アンコールにドヴォルザークのスラヴ舞曲第8番(だっけ?)。メータのソロ・カーテンコールあり。
●「グレイト」の終楽章で、一度、メータはわざわざ客席側からぐるりと回って第2ヴァイオリンにキューを出して、一瞬客席が「!」ってなった。この技になにか名前がほしい。回転する80歳。謎。

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