●12年ぶりの来日となったユリア・フィッシャー。かつてひとつの公演でサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番とグリーグのピアノ協奏曲の両方で務めたこともあるという異才の持ち主。天才美少女時代の印象が強いんだけど、なにせ時は秒速1秒の猛スピードで流れており、もうすっかり成熟した大人の音楽家になっていたのであった。
●で、15日は東京オペラシティでピアノのマルティン・ヘルムヒェンと共演してリサイタル。「ソナチネ」が4曲中3曲もあるという珍しいプログラム。前半にドヴォルザークのソナチネ ト長調、シューベルトのヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第3番ト短調(これは当日発表で追加された曲)、後半にシューベルトのヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番ニ長調、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調。シューベルト作品はPENTATONEレーベルからこのコンビによる録音がリリースされている。ソナチネなんて呼ばれてはいても、決して子供向けの作品なんかじゃないよ、というメッセージが込められたようなプログラム。それはまあ、そうなんだと信じられるんだけど、あまりに演奏のクォリティが高いがゆえに、ランボルギーニで徐行運転してるみたいなもどかしさも感じなくはない。「12年ぶり」とか思うからなのか。ブラームスのソナタ第3番が始まったときの「待ってました!」感は半端じゃない。アクセルがぐっと踏み込まれる。男前なブラームス。なんてすばらしい曲なの、と留飲を下げる。アンコールにブラームスのF.A.E.ソナタ~スケルツォ。
October 18, 2016