●19日はサントリーホールでシルヴァン・カンブルラン指揮読響。五嶋みどりが2曲の協奏曲を弾いてくれた。前半にシューベルト~ウェーベルン編曲の「6つのドイツ舞曲」、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲、後半にヨハネス・マリア・シュタウト(1974~ )のヴァイオリン協奏曲「オスカー」日本初演、デュティユーの交響曲第2番「ル・ドゥーブル」。新しい作品中心のプログラムだが全席完売。シューベルト~ウェーベルン~コルンゴルト~シュタウト(インスブルック生まれでウィーンに学ぶ)という19世紀から21世紀にわたるウィーン音楽をたどった末に、最後はデュティユーで締めるというプログラム。
●より刺激的だったのは後半。シュタウトの「オスカー」は通常の弦五部におびただしい数の打楽器が加わるという管楽器なしのオーケストラと独奏ヴァイオリンによる協奏曲。約18分ほどの曲で全体が5つの部分に分かれているとあって各部は簡潔、多種多彩な音色を用いた音の対話が繰り広げられる。初演者である五嶋みどりのソロは圧巻。技巧と情念が離れ技的にバランスする。デュティユーの「ル・ドゥーブル」は初めて生で聴いたんだけど「あー、こういうことだったんだ」とやっと趣向を知る。これは録音じゃ伝わらない。ふたつの管弦楽群が用いられてて、指揮者の周りをぐるりと小オーケストラが囲み(オーボエ、クラリネット、ファゴット、トランペット、トロンボーン、ティンパニ、チェレスタ、チェンバロ、弦楽四重奏)、その外側に二管編成のオーケストラが広がるという配置になっていて、大小それぞれのオーケストラの間で音色やダイナミズムの対比に加えて、音の遠近感みたいなものが生まれるようになっている。「小」のほうにティンパニなんかも入っているので、舞台上は視覚的にも斬新。「小」のチェンバロは鈴木優人さんだった! 作品の初演は1959年。曲想からほかの20世紀の作曲家も連想する。全般に官能性の要素を強く感じたかな。終楽章のおしまい、静かに消え入るように曲を閉じるところが美しい。
October 20, 2016