●少し遡って、10月24日は「東京・春・音楽祭」2017の概要発表会。場所は東京文化会館の大会議室。この前の時間帯に大ホールでNBSのウィーン国立歌劇場記者会見があったのだが、そこからマレク・ヤノフスキが移動してこちらの会見に連続登壇。写真はマエストロと鈴木幸一実行委員長。会見場には多数のプレスが詰めかけていた。
●で、来年の「東京・春・音楽祭」は3月16日からの一か月にわたって開催される。有料公演と無料公演を合わせて計約150公演。回を重ねるごとに公演内容も充実度を増し、しっかりと春の上野の風物詩として定着した感がある。会場は例年同様、東京文化会館をはじめ、国立科学博物館や東京都美術館など、上野に集まる多数の文化施設。最大の目玉公演はヤノフスキ指揮N響のワーグナー・シリーズで、いよいよ「神々の黄昏」が演奏会形式で上演される。
●鈴木幸一実行委員長「上野という志の高い文化ゾーンでこの音楽祭を開催し、年々少しずつ形になって来た。当初より公的資金の助けを受けない形で続けており、数十社の協賛を受けることができた。来年は『神々の黄昏』がとりあげられる。たまたまバイロイトでヤノフスキさんが指揮する『神々の黄昏』を聴いたが、ヒュージ・サクセスで大きな話題となった。音楽には形がなく、聴いている人々の記憶にしか残らない。その意味では人生にとても近いもの。一年一年、積み重ねていきたい」
●ヤノフスキ「来年は『ニーベルングの指環』シリーズが完結する。またN響と共演できることは大きな喜びだ。N響は80~90年代に指揮したときからクォリティを持ったオーケストラだと思っていた。これまでの3年を振り返ってみると、芸術性の高い公演を実現できており、非常に満足している。演奏会形式である点にも魅力を感じている。舞台奥にスクリーンを設置して、演奏の妨げとならないような映像を投影するという上演方法はすばらしい解決策だと思う。欧州での舞台上演と比較しても、とてもすばらしい公演になると思っている」
●ヤノフスキはその前のウィーン国立歌劇場の会見で、近年の演出ありきのオペラに批判的な言葉を述べていたばかりなので、続けて聞いていると、話がちゃんとつながっている。
●音楽祭全体の概要についても発表された。目立ったところを挙げておくと、「合唱の芸術シリーズ」では、ウルフ・シルマー指揮の東京都交響楽団と東京オペラシンガーズがシューベルトのミサ曲第6番ほかを演奏。歌曲シリーズはバリトンのマルクス・アイヒェ、メゾソプラノのエリーザベト・クールマン。
●公演数が多すぎて紹介しきれないのだが、この音楽祭は2つのレイヤーから構成されているなといつも感じる。片方に「ワーグナー・シリーズ」とか「合唱の芸術シリーズ」といった大型公演があり、もう片方にミュージアム・コンサートとかディスカヴァリー・シリーズとかマラソン・コンサートとか、ぐっと親密な雰囲気の企画性の高い公演がたくさんある。上野の街の音楽祭というカラーが定着しているのも、後者が充実しているからこそ。
November 2, 2016