November 25, 2016

ダニエル・ハーディング指揮パリ管弦楽団のベルリオーズ他

●24日は東京芸術劇場でダニエル・ハーディング指揮パリ管弦楽団。新日フィルでなんども聴いたハーディングが、パリ管弦楽団の音楽監督になって帰ってくるとは。プログラムが新鮮で吉。この日はブリテンの「ピーター・グライムズ」から4つの海の間奏曲、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(ジョシュア・ベル)、そしてベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」から。芸劇は可動反響板をおろしてオルガンを隠す設定。冒頭のブリテンからとてもよく鳴る。「4つの海の間奏曲」を聴くともうそれだけで気分は寒村で疎外される孤独な男の気分になれる。ハーディングが作り出すイメージは思った以上に起伏に富み、雄弁。どの曲でもそうだけど、細部までデザインが施された鮮度の高い解釈に刺激されつつも、オーケストラの色彩的で輝かしいサウンドに聴きほれるばかり。
●ジョシュア・ベルは視覚的にも音楽的もゼスチャーが大きくて、非常に甘美で情感豊かなブラームス。感情表現の振幅が大きくて、一瞬でぐぐっとギアチェンジして一気に気分を高揚させるあたりが巧み。そして第1楽章のカデンツァは初耳。これはベルのオリジナルなんだろうか。すばらしい。部分的にヨアヒムも? オーケストラの強奏時にも埋没することなく、美音が届く。あと、カーテンコールで楽器を持たずに出てくるというのはいい手かもしれない。「アンコール、あるのかな? それともないのかな?」って妙にヤキモキしなくて済むから。
●劇的交響曲「ロメオとジュリエット」をベルリオーズの最高傑作と呼んだのはシルヴァン・カンブルラン。全曲はともかく、「愛の情景」とか「キャピュレット家の大宴会」は奇跡の名曲だと思う。で、当初、プログラムでは「愛の情景」で始まって、「キャピュレット家の大宴会」で終わる4曲が発表されていたけど、当日になってみると変更があって、「ロメオひとり ~ キャピュレット家の大宴会」「愛の情景」「マブ女王のスケルツォ」「キャピュレット家の墓地にたたずむロメオ」という曲順。え、「キャピュレット家の大宴会」で華々しく盛り上がって終わるんじゃないんだ。でもこれならストーリーの順に沿っているということなのか。最後は寂寞とした幻想的な情景で、少し尖がったアンチクライマックスに。おもしろい。アンコールはなかったが、すでに9時半コースだったので長さは十分。

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