●ストラヴィンスキーの失われた初期作品、「葬送の歌」が12月2日サンクトペテルブルクにて、ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団によって蘇演された。少し前からニュースで話題になっていたが、この作品はリムスキー=コルサコフの逝去に伴って1908年に作曲された作品。1909年に一度だけ演奏されてその後は革命の混乱で楽譜が失われた。これがサンクトペテルブルク音楽院の図書室から見つかったという。演奏時間は約12分で、さっそく作品番号5が与えられている。時期としては1908年初演の「花火」「幻想的スケルツォ」より後、1910年初演のバレエ音楽「火の鳥」の前ということになる。
●で、ありがたいことに、そのゲルギエフによる蘇演の映像がmedici.tvで配信されている(すごい時代になった)。アカウントをお持ちならPCで見ることができるし、スマホからであればアプリをダウンロードすれば無料で視聴可。いちばん手っ取り早いのはGramophoneのサイトへ行けば、なんの手続きもなしに見ることができて吉(いつまで見られるのかは知りません)。
●で、とりあえずさっくりと聴いた印象をいうと、「火の鳥」+「トリスタンとイゾルデ」。冒頭から「火の鳥」プロトタイプ。そして意外だったのはかなりワーグナー風の官能性が前面に出ているところだろうか。よくここからワーグナーを卒業して、「火の鳥」へと短期間で飛躍できたものだなと思う。あと、軽くドビュッシーの「海」も連想させる。ストラヴィンスキー自身は「火の鳥」以前のベストの作品と語っていたというのだが、前作「花火」op.4のほうが後の作風を予告しているとも感じる。
●決してキャッチーな曲ではないが、話題性があるのと、演奏時間がほどよいので、当面はコンサートで盛んに演奏されるんじゃないだろうか。日本初演はすでに決まっていて、2017年5月にエサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団が東京オペラシティで演奏する。
December 6, 2016