●13日はNHKホールでファンホ・メナ指揮N響。ファリャのオペラ「はかない人生」からの間奏曲とスペイン舞曲で幕を開け、カニサレスを独奏に迎えたロドリーゴのアランフェス協奏曲、休憩をはさんでドビュッシーの「イベリア」、ファリャのバレエ組曲「三角帽子」第1部&第2部という変則スペイン・プロ。
●昨年、ベルリン・フィル定期にも招かれて注目を集めたファンホ・メナだが、日本にはちょうど10年前にラ・フォル・ジュルネでビルバオ交響楽団とともに来日している。覚えてます、東京国際フォーラムのホールAでの朝一コンサート(0歳から入場可)で赤子たちが泣くなかで見せてくれた雄姿を。LFJでわりとひっそりめで来日して、その後メジャーになってN響に帰ってくるというパターンは何度目だろうか。 フランソワ・グザヴィエ・ロトもそうだったし、ベルトラン・シャマユもそうだし。そう考えると、ルネ・マルタンは慧眼。しかし10年経っただけあって、メナは恰幅がよくなっていて、一瞬「え、この人だっけ?」と思ってしまったのだった。変わらずムンムンしてて、カッコいいのだが。
●カッコいいといえばカニサレス。足を組んでギターを構えただけでもうカッコいい。PAあり。アランフェス協奏曲の後、アンコールで自作の「時への憧れ」を演奏してくれた。聞きほれる。
●メナの音作りは基本的に明快緻密で、整然とした音楽を作り出していたと思う。が、「三角帽子」では思い切り盛り上げてくれた。終盤では指揮台で複雑なステップを踏みながら、オーケストラを焚き付ける。「洗練された土臭さ」みたいなファリャの魅力が全開に。
●ちなみにメナはバスク地方の出身なんだとか。で、ビルバオ交響楽団の芸術監督を務めているわけだ。そこでサッカーファンならすぐに連想するのが、スペインリーグのアスレチック・ビルバオ。このクラブは伝統的にバスク系の選手だけと契約するという純血主義を貫いている。欧州主要リーグではすっかり国際化が進んでおり、先発選手に自国人がひとりもいなかったなどという事態が出来して久しいのだが、いまだにこのクラブは選手の血筋や出身地にこだわり続けているのだ(それでいて結構強い)。さて、メナをシェフとするビルバオ交響楽団にもそんな発想があるのだろうか? まさか。
January 16, 2017