January 23, 2017

インキネン&日本フィルのブルックナー第8番

●20日はサントリーホールでインキネン指揮日本フィルによるブルックナーの交響曲第8番。大曲一曲のみの勝負プロ。これがインキネンの日フィル首席指揮者就任後初となる東京定期になるのだとか。すでになんども聴いているコンビだから特にそんな記念の公演という気もしなかったが、聴いてみるとやはり新たな第一歩を記したんだなという手ごたえあり。
●これまでに聴いた範囲ではインキネンの印象にはかなりばらつきがあるんだけど、おおむね感じるのは清澄さや音楽の流れの自然さ、別の見方をすれば彫りが浅いというか淡白。それでいてワーグナーやブルックナーのような重厚な音楽を得意とするところがインキネンの興味深いところ。一方、以前の記者会見でインキネンは日本フィルの特徴を「透明感のある美しい音色」と語りつつ、「これからはワーグナー、ブルックナーなどドイツ音楽での重厚で深みのある音を追求したい」とも語っていて、彼の目指すサウンドはもっと先にあるのだなとも感じていた。今回の第8番は端正な造形を保ちながらも、一段階、重量感を増した充実したブルックナーだったと思う。弦は対向配置。テンポは全体に遅めで、じっくり、しかし決して粘らず。音の大伽藍、というよりは巨大な宗教画を仰ぎ見る、といった感じのほうが近いかな。
●さて、サントリーホールは改修工事のため2017年2月6日から8月31日まで休館する。けっこう長い。各オケとも別のホールを代わりに使ったりで、この期間中はホールとオーケストラの新鮮な組合せで聴く機会も多そう。休館前のサントリーホールにはあと一回、足を運ぶ予定。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「ロペス=コボスとN響のオール・レスピーギ・プロ」です。

次の記事は「金沢歌劇座「蝶々夫人」全国共同制作プロジェクト」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ