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March 27, 2017

アンドラーシュ・シフ・ピアノ・リサイタル The Last Sonatas

●23日は東京オペラシティでアンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル。モーツァルトのピアノ・ソナタ第17番ニ長調、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番変ロ長調、ハイドンのピアノ・ソナタ第52番変ホ長調、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番ハ短調という、それぞれ最後のピアノ・ソナタを集めたプログラム。それだけだといかにも大家にふさわしいプログラムといったところだが、なんと、4曲をこの順番で休憩なしで弾き通すという趣向。うーん、それはいくらなんでも長すぎなんじゃないかとか、シューベルトの第21番を聴いた後にすぐに別の曲を聴く気になるものだろうかとか、うっかり知らずにやってきたお客さんのトイレ退出が続出するんじゃないかとか、いろんなことが気になった。でも始まったら、もうなにも気にならない。ただ音楽があるのみ。一度も袖に帰らず最後まで。
●4曲こうして並ぶとメガ・ソナタって感じもする。モーツァルト、シューベルト、ハイドン、ベートーヴェンの各ソナタを楽章に見立てれば、快活な第1楽章、歌謡的な第2楽章、諧謔的な第3楽章、フーガと変奏からなる第4楽章、とも? 時間の感覚が拡大していって、一回り外枠で描かれるメガ・ソナタ、あるいは巨大なソナタのなかにまたソナタがあるフラクタルなソナタというか。粛々と続く音楽に浸りきっている内に時間感覚が麻痺していくような眩暈の悦楽。
●長いプログラムだけど、休憩がなかった分、時間を稼げて、9時ごろに本編が終了。しかし、そこからさらに続くのだ。そのまま30分強にわたる大アンコール大会に突入。バッハのゴルトベルク変奏曲のアリア、同じくバッハのパルティータ第1番からメヌエットとジーグを続けて、ブラームスのインテルメッツォ変ホ長調op117-1、バルトークの「子供のために」から「豚飼いの踊り」、モーツァルトのピアノ・ソナタ第15番ハ長調第1楽章、シューベルトの即興曲変ホ長調D899-2、シューマンの「楽しき農夫」。リラックスした家庭音楽会のような雰囲気の選曲で、モーツァルトやシューマンを弾きだしたときは会場から「くすくす」と笑いが漏れて一段と親密な雰囲気に。最後は鍵盤のふたを閉じて聴衆に別れを告げた。スタオベ多数。決してお尻が痛くなったからではなくて。