●18日は東京オペラシティのリサイタルホールで、B→C 荒木奏美オーボエ・リサイタル。国際オーボエコンクール・軽井沢で日本人初の優勝を果たした東京交響楽団首席奏者の登場ということでチケットは完売。この日、同じオペラシティのコンサートホールではギルバート&都響がジョン・アダムズの「シェエラザード .2」を演奏してて、初台のコンテンポラリー度高し。
●プログラムは盛りだくさん。前半にテレマンのファンタジア イ長調、バッハのオーボエ・ソナタ ト短調 BWV1030b、シューマンの「アダージョとアレグロ」、細川俊夫の「スペル・ソング 呪文のうた」、後半がホリガーのオーボエ・ソナタ、エリオット・カーターの「インナー・ソング」、ジョリヴェの「コントロヴェルシア」、ドラティの「ドゥオ・コンチェルタンテ」。ピアノにリード希亜奈、チェンバロに桒形亜樹子、ハープに景山梨乃。「バッハからコンテンポラリーへ」というこのシリーズの趣旨に従って、バロックから現代まで、きわめて多彩でチャレンジングなプログラム。ハードなプログラムだが、美しくのびやかな音色でどれも自然体の音楽として奏でられていたのが印象的。余裕すら感じる。アンコールはモーツァルトの「後宮からの逃走」のアリア「幸せと喜びが」で開放的に。
●知らない曲をたくさん聴けたので、作品について感じたところを備忘録的にメモ。エリオット・カーターの「インナー・ソング」。モダンではあるんだけど端整な造形の美しさみたいなものを感じさせ、しかも音楽の柄というか表現の振幅が意外と大きくて聴き映えがする。バロックと並列するというプログラムの趣旨との親和性の高さも。無伴奏。ホリガーのオーボエ・ソナタはなんと10代で書いた作品を40年以上経ってから改作したもの。もともとは50年代後半の作品。聴きやすいし、みずみずしさも感じる。ジョリヴェの「コントロヴェルシア」。怪しさと真正さの境界上にあるなにか。
●ドラティの「ドゥオ・コンチェルタンテ」。ある意味、最大の驚き。「ドラティっていう作曲家、知らないなあ」と思って出かけてみたら、往年の名指揮者アンタル・ドラティのことだった! えっ、なんだ、そなの? そういえば、ドラティが作曲もしている話はどこかで目にしてただろうか。不覚。作風としてはモダンっぽく始まるんだけど、先鋭ではなく、折衷的だったり、ハンガリー風(?)だったり、軽快でユーモラスだったりと、どこか円満さがにじみ出ている感。気になって帰宅してからNMLにアクセスしてみたら4種類も録音があって、オーボエのレパートリーとして根付いている模様。アンタル・ドラティが活発なレコーディング活動で指揮者として名を馳せていた頃に、彼が作曲家として後世に名を残す可能性を意識していた人はどれくらいいるんだろうか。
●勢いでNMLにあるドラティの交響曲とかも聴いてみるべき?
April 19, 2017