●16日は東京オペラシティでマーティン・ブラビンズ指揮東京都交響楽団。オペラシティで都響を聴くというのが新鮮な感じ。いや、本当に新鮮なのはプログラムか。バターワース「青柳の堤」、ティペットのピアノ協奏曲(スティーヴン・オズボーン独奏)、ヴォーン・ウィリアムズのロンドン交響曲(交響曲第2番)。どれもなかなか聴けない。特にティペットのピアノ協奏曲は1955年の作品ながらこれが日本初演なのだとか。
●ティペット作品を生で聴いたのは、ノリントン&N響の交響曲第1番以来だろうか。ピアノ協奏曲もベートーヴェンに触発された作品というが、交響曲第1番ほどベートーヴェン的なスピリッツは感じられず、むしろピアノを管弦楽と対峙するソリストとしてよりはアンサンブルの一員として扱うスタイルはバロック協奏曲的な発想というか。形式的には古典派協奏曲風でもあって、ティペット流の新古典主義。カッコいいフレーズが次々と登場する一方で、30分はこのスタイルには長すぎるような気も(特に第1楽章)。ソリストは譜めくりあり。
●ヴォーン・ウィリアムズのロンドン交響曲、自分にとってはなじみの薄い作曲家なんだけれど、こんなにいい曲だったのかと認識を改める。ブラビンズと都響の澄明なサウンドのおかげもあってか、オーケストレーションが思った以上に壮麗。第1楽章、ビッグ・ベンの時報の鐘が出てくるところで、「ああ、ロンドンだな」と思うべきなのだろうが、学校の授業開始の気分になってしまうのが恐ろしい(第4楽章で同じ主題が回帰するところは授業おしまいの合図だ)。その代わり、第1楽章では「オペラ座の怪人」の主題が登場してミュージカルの街ロンドンを連想させる、というのもこのアンドリュー・ロイド・ウェッバーの有名なミュージカルを初演したのはロンドンのウエスト・エンドの劇場であり、ヴォーン・ウィリアムズはそのロンドンのシンボルともいうべき主題を自作に引用したのであった……というのは、もちろん大ウソだ。20世紀初頭の交響曲にアンドリュー・ロイド・ウェッバーが出てくるわけがない。順序が逆。でもそんな誤読を喜んでしたくなるなにかがここに。
●マーティン・ブラビンズはいつのまにか立派な白いひげを蓄えていた。遠目にはサー・チャールズ・グローヴズ風? ずいぶん雰囲気が違っていて、一瞬だれかと思った。風格がある。
May 17, 2017