●8日は渋谷区のさくらホールでニルス・メンケマイヤーのヴィオラ・リサイタル。前半は無伴奏で、サント=コロンブの「哀しみの墓」より「涙」、コンスタンティア・グルズィの「新しい世界のための9つの子守り歌」、バッハの無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調、後半は松本和将のピアノとともにシューマンの「おとぎの絵本」op113、ヒンデミットのヴィオラとピアノのためのソナタop.11-4。圧倒的な技術の高さ、熱量と集中力、音色の美しさで、あっという間の2時間だった。最強レベルの独奏ヴィオラ。アンコールにブラームスのF.A.E.ソナタ~スケルツォ。
●プログラムの多彩さも吉。前半は当初発表から曲順を変更して、最初にサント=コロンブで始めて、そのままつなげてコンスタンティア・グルズィへ入るという流れが効果的。グルズィは現代ギリシャの作曲家で、この作品はメンケマイヤー自身が委嘱した作品。疑似民俗音楽風のテイストをうっすらと漂わせる。しかし前半の白眉はやはりバッハ。ゆったりとしたモノローグ風のサラバンドを別とすれば、各舞曲が本当に踊れそうな生き生きとした音楽になっていたのが印象に残る。後半はヒンデミットが聴きもので、終盤の畳みかけるような白熱した高揚感がすばらしい。アンコールでクールダウンするのかと思いきや、ブラームスのF.A.E.ソナタ~スケルツォで熱気を帯びた雰囲気のまま公演を終えた。
●メンケマイヤーって、ソニーからリリースされているバッハの無伴奏チェロ組曲集のジャケットの印象が強くて、なんとなくツンツンと尖がったクールなオシャレさん的なイメージを思い浮かべていたんだけど、実物はもっと親しみやすそうな雰囲気の人だった。だって、ジャケットでは波打ち際をズボンの裾をめくって楽器を持って歩いているし、なんとなく。
June 9, 2017