●9日は東京オペラシティでN響のMusic Tomorrow 2017。開演に先立って、尾高賞授賞式とプレトークあり。プログラムは前半にN響委嘱作品である岸野末利加のオーケストラのための「シェイズ・オブ・オーカー」世界初演、ターネイジ(タネジ)のピアノ協奏曲の日本初演(独奏は反田恭平)、後半に第65回尾高賞受賞作品である二作、一柳慧の交響曲第10番「―さまざまな想い出の中に―岩城宏之の追憶に」と池辺晋一郎のシンフォニーX「次の時代のために」。たまたま「交響曲第10番」がそろってダブル受賞したことになる。指揮はローレンス・レネス。
●全体に共通するのは「追憶」というテーマか。「シェイズ・オブ・オーカー」では作曲者が学生時代に訪れた南仏のオーカーの鉱脈の豊かな色彩が題材となり、タネジのピアノ協奏曲では第2楽章でヘンツェが追悼され、一柳作品には打楽器奏者でもあった岩城宏之の思い出が投影され、池辺作品は武満徹没後20年公演で初演され、過去の自作からの引用も含まれる。Tomorrow = Memorial というのが示唆的。しかし池辺作品は「次の時代のために」というだけあって、輝かしくポジティブなエネルギーに満ちていた。
●タネジはもともと超絶技巧で知られるアムランの独奏のために書かれた作品。多彩で気まぐれで、エンタテインメント性は高い。反田さんのソロは作品がしっかりと手の内に入っている感が伝わってきて、見事の一語。スリリングで楽しい。とてつもない人気ピアニストとなって多忙をきわめているはずだけど、こんなふうに新作にも取り組んでくれるのがうれしい。超名曲もぜんぜんいいんだけど、人気があるからこそいろんな作品に光を当ててくれれば、と願う。
●しかし交響曲第10番が2曲も誕生してしまって、「第九の呪い」は旗色が悪い。関係ないけど、今年生誕200年を迎えたデンマークの作曲ニルス・ゲーゼは交響曲第8番までしか書いてないんすよ。惜しい、なぜあと一曲書いてくれなかったのかと。シューベルトの「グレート」も最近は第9番じゃなくて第8番って書かれることが多くなってきたし、「第九の呪い」はそろそろ賞味期限切れかも。
June 12, 2017