●30日はNHKホールでパーヴォ・ヤルヴィ&N響。前半がシューマンの「ゲノヴェーヴァ」序曲、チェロ協奏曲(ターニャ・テツラフ)、後半がシューベルトの交響曲第8番(第9番)「ザ・グレート」。シューマンが見出した「ザ・グレート」にシューマン自身の作品を組み合わせたプログラム。それにしてもシューベルトやメンデルスゾーンの天衣無縫ぶりと比べると、シューマンはその正反対で至るところ縫い目だらけの労作って感じがする。あのチェロ協奏曲を「徹底して快活な作品」と呼んだシューマンに「快活」の定義を問いただしたい。そして、そんな気難しいシューマンの作品をたまらなく魅力的に感じてしまう。前半、ソリストのアンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュード。なんという軽快さ、そしてユーモア。
●シューベルトの「ザ・グレート」は歯切れよく推進力にあふれた出色の快演。隅々までシャープに磨き上げられ、引き締まったサウンドで前へ前へと進む。執拗な反復にスポーティな心地よさを覚えるほど。脳内NHKホールではみんな立ち上がって踊り出していた。「ザ・グレート」の父はベートーヴェンの交響曲第7番、遠い末裔はラヴェルの「ボレロ」。客席の反応はここ最近のパーヴォ&N響コンビではピカイチ(死語?)。シューマンいうところのシューベルトの「天国的な長さ」、すなわち「もう終わるんじゃないかと心配しなくてもいい」という持続する喜びに全力で共感できる。もっと長くてもいいし、もっとリピートしてくれてもいいってくらいに。
July 3, 2017