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July 11, 2017

ミンコフスキ指揮東京都交響楽団のハイドン&ブルックナー

●10日は東京文化会館でマルク・ミンコフスキ指揮都響。ハイドンの交響曲第102番とブルックナーの交響曲第3番初稿というプログラム。ブルックナーの交響曲第3番というと初稿、第2稿、第3稿とあって、少し前に高関健指揮東京シティ・フィルで第2稿の演奏が話題を呼んでいたが、今回は初稿。「一粒で二度おいしい」ならぬ「一粒で三度おいしい」ブルックナー。異稿がいっぱいあるってお得だねっ! ミンコフスキのブルックナーというだけでも十分に新鮮味はあるんだけど、そこにきて初稿とは。
●初稿には全体にゴツゴツとした粗削りの手触りがあって、制作途中の曲を聴いているというような感が強い。やっぱり改稿するたびに曲は洗練されていくんだなと思う。ただ、おもしろさとなると話は別。ワーグナーの引用も、引用がないほうが作品の普遍性は高まりそうではあるけど、一方で引用があるほうが今っぽいというか、作品を重層的に聴ける。
●ブルックナーの珍しい異稿というと、ロジェストヴェンスキー&読響での第5番シャルク版が記憶に新しいところで、あのときはシャルク版ということに加えてロジェストヴェンスキーの想定外の遅さが特異な世界を作り出していた。その点でいうと、今回のミンコフスキは想定外の速さが別世界に連れて行ってくれた。特に終楽章。猛然と前進するアレグロのダイナミズムは、ハイドンの交響曲が持つ終楽章の推進力の時を超えたエコー。あのコーダでのせわしないほどに煽り立てる高速の指揮棒と来たら。
●鳴り止まない拍手にこたえて、ミンコフスキのソロ・カーテンコールあり。客席にインバルの姿も。レパートリー的に重なってるけど、芸風的にぜんぜん重なってない(たぶん)。
●どういうわけか、最近うっかり気がつくとブルックナーを聴いている気がする。中毒性があるので、ほどほどにしておかないと。