●映画館で「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(ジョン・リー・ハンコック監督)を見た。マクドナルドの創業者として知られるレイ・クロックを主人公とした実話に基づく物語。といっても、マクドナルドのお店を最初に作ったのはこの人ではない。本当の創始者はマクドナルド兄弟のふたり。この兄弟はいわば発明者で、かつてないほどスピーディに提供される新しいサービス形態のハンバーガーショップを考案して、マクドナルドと名付けた店を繁盛させていた。そこにミルクシェーク製造機のセールスに訪れたのがレイ・クロック。彼はマクドナルド兄弟の店に感銘を受け、フランチャイズ方式でビジネスを拡大することを提案する。マクドナルド兄弟はあまり乗り気ではなかったが、レイ・クロックの熱意に負けてこれを了承する。すると、レイ・クロックは猛然と事業を拡大し、大躍進を遂げるのだが、やがてマクドナルド兄弟との間の亀裂は深まり両者は対立する……といった筋立て。
●史実そのものの興味深さもあって、これは秀作。いいなと思ったのは、レイ・クロック側とマクドナルド兄弟側のどちらにも肩入れしていないところ。ありがちな見方としては、創意に富むがビジネスに疎いマクドナルド兄弟のもとに、辣腕ビジネスマンがやってきて、なにからなにまで奪ってしまった、ということになるんだけど(事実そうでもあるのだが)、ちゃんとレイ・クロックの側にも共感できるように描かれている。マクドナルド兄弟の発明は立派だけど、でもそれを全世界に広げる才能はさらに偉大ともいえるわけだし。しかもマクドナルド兄弟が単なる敗者ともいいがたいところがある。ちなみに、このレイ・クロックって52歳になってマクドナルドを始めたっていうんすよ。そこから巨大企業を築きあげたんだから驚き。チェコ系移民の一家の出身で、母親がピアノ教師だったこともありピアノの腕前も達者だったそう。
●あと、この映画が偉いと思うのは、見終わった後でも特にハンバーガーを食べたくなったりしないところ。ぜんぜん平気。
August 16, 2017