●19日は久しぶりに松本へ。前回の松本への旅では、同日のあずさに乗った音楽関係者たちが次々とサイトウ・キネンを聴きに行くのを尻目に、ワタシはその足でアルウィンへ直行し松本山雅FCの試合を観戦し、その翌日は乗鞍高原まで行ってハイキングして、なにも聴かずに帰るという謎行動をとったのであった(参照:ゾンビと私 その24 乗鞍高原ハイキング)。ビバ、アルピコ交通。新島々バスターミナル上等。いや、単に松本山雅を観戦したくて旅行を計画したら、たまたまその日がサイトウ・キネンと重なったというだけなのであるが。
●が、今回の目的は演奏会。セイジ・オザワ 松本フェスティバル2017でファビオ・ルイージ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(キッセイ文化ホール)。曲はマーラーの交響曲第9番のみ。この日のオーケストラ出演者はこちら。日本を代表する名手たちに加えてバボラークとかタルコヴィとかゼーガースがいて、サッカーにたとえるならニッポン代表にメッシやネイマールがスポット参戦してくれているようなドリームチームによる、マーラーの第9番。最強に強まっている。それでいて当日券あり。
●マーラーの第9番はやはり特別な曲。あらゆる交響曲のなかでもこれほど襟を正して聴かなければと思わせる曲はほとんどない。実演であれ録音であれ、奇跡の名演に接するたびに曲のイメージがどんどん脳内で膨張して、もしかしたら実像以上の彼岸的な絶美の世界がすっかり築かれてしまっているので、かえって「本物」に接することでイメージとの乖離に困惑することも少なくないんだけど、でもこの日は違っていた。自分の勝手な脳内イメージを外側にぐっと一段押し広げて、いまだ聴いたことのないマーラーを体験できたという充足感。ひとりひとりの奏者から生まれる音の美しさの総和を、さらに一段階ルイージの棒が引きあげて、熱い命を吹き込む。第1楽章では弦と管の響きのバランスに「つなぎ目」を感じるようなところもあったんだけど、進むにつれて一体に。第3楽章は凶暴というよりは悦楽のブルレスケ。いちばんすごいと思ったのは第4楽章。冒頭から弦楽合奏の緻密さが際立っていた。曲が終わった後は、完全な沈黙の後で大喝采、鳴り止まない拍手にこたえて、ルイージのみならず楽員も舞台に再登場してのカーテンコール。
●この後、東京に帰る電車はないので、松本に一泊。これで松本山雅の試合とくっつけられれば最高だったのだが、あいにくこの週はアウェイ。今回、音楽祭のオーケストラ・コンサートはA、B、Cプロのどの週末も松本山雅はアウェイゲーム。土曜の夜に松本山雅(夏なので試合は夜になる)、日曜の昼にコンサートとなれば一泊で両方行けるんだけど、なかなかそうも行かないか。
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●今日は本サイトの誕生日。インターネット草創期の1995年に始まったので、22周年になる。よく飽きないというか、進歩がないというか。
August 21, 2017