●イギリスのSF作家ブライアン・オールディスが逝去。92歳。SNSを見ていると、みな一様に「まだ生きていたのか!」とびっくりしていた。たしかに「地球の長い午後」をはじめとする代表作が書かれたのは1970年代まで。以前、当欄でご紹介した「寄港地のない船」に至っては50年代の作。そこそこ翻訳されていたと思ったが、今amazonで見たら大半は絶版・品切状態の模様。もちろん電子化もされていない。
●読んだのが昔なので中身はほとんど忘れているのだが、「地球の長い午後」は未来の地球で巨大な樹木が地表を覆いつくし、進化した食肉植物が食物連鎖の頂点に立ち、文明を失った人類がかろうじて生き延びている、という強烈な終末感に包まれた小説だった。知能を有するようになったアミガサダケが、主人公の脳に寄生して行動を支配するという設定がかなり気持ち悪い。そもそもアミガサダケとはどんなキノコなのか、この小説以外で見聞きしたことがあるのだろうか。で、気になって検索してみたら、こんな姿のキノコだった。なるほど、これはいくぶん禍々しい。なんだか脳っぽくて、いかにも進化するとヒトに寄生しそう。これ、欧米じゃ食べるらしいっすよ。うっ。
●自分は「地球の長い午後」よりも「マラキア・タペストリ」のほうが好きだった。架空の都市国家が舞台なんだけど、ヨーロッパの宮廷文化とファンタジーに登場するような想像上の動物が混在するような世界でくりひろげられる冒険譚で、「地球の長い午後」とはまるで違った絢爛豪華な世界の描写に圧倒された……ような気がする(うろ覚え)。今にして思うと、バロック・オペラ風の物語だったような? 復刊の可能性はあるだろうか。
●未読なんだけど、「グレイベアド―子供のいない惑星」では、子供が生まれなくなった平均年齢70歳の超ウルトラ高齢化した人間社会が舞台になっている。今の日本から見るとおそろしく先見性のある話かも。復刊するならこっちか。
August 23, 2017
ブライアン・オールディス追悼
アミガサダケ photo By TOMMES-WIKI [CC BY-SA 3.0 ], via Wikimedia Commons