●24日は東京芸術劇場でファビオ・ルイージ指揮読響。週末のサイトウ・キネンに続いて、松本から東京へ。サイトウ・キネンからもとてつもないサウンドが出てきたが、この日はまた一味違った緊密堅牢な響き。読響とは初共演ということなんだけど、オーケストラのポテンシャルが最大限に引き出された記憶に残る名演だった思う。
●プログラムはR・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、ハイドンの交響曲第82番「熊」、休憩を挟んでR・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。ぼんやりとしがちな「ドン・ファン」の冒頭だが、いきなりビシッと気合の入った音が出てきて、普段の公演とはずいぶん違った雰囲気に。ひりひりした緊張感のなかで集中度の高い音楽が生み出されてゆく。カンブルランが振った際の精緻でカラフルなサウンドとは別のゴールに向かった、造形のしっかりとしたアンサンブル。しかも聴かせどころは情感豊か。このクォリティの高さ、周到さ。これは……お見合いなの?
●「英雄の生涯」は終結部が一般的なバージョンと違っていて、最後の一撃がなくて、静かに消え入るように終わるオリジナル版。ルイージによれば「人生を静かに振り返る老人の姿」が描かれるのだから、このオリジナル版がふさわしい、と。これは納得。ストーリーとして筋が通っているし、音楽の流れとしても自然で美しい。これを聴くと一般的な終結部がとってつけたようなわざとらしいものに思えてくる。改稿によりエンディングが派手になった似たパターンとしては、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」があるけど、あっちの改訂版はいいと思うんすよね。華麗で、演奏効果抜群だし。でも「英雄の生涯」のほうはそうでもないわけで、オリジナル版を聴いてもなにかを聴き損なったという悔しさがまったくない。というのが発見。
August 25, 2017