●17日は東京文化会館の会議室でバイエルン国立歌劇場2017日本公演開幕記者会見。同劇場の音楽総監督であり、今回「タンホイザー」を指揮するキリル・ペトレンコをはじめ、タンホイザー役のクラウス・フロリアン・フォークト、エリーザベト役アンネッテ・ダッシュ、ヴェーヌス役エレーナ・パンクラトヴァ、ヴォルフラム役マティアス・ゲルネ、そして劇場総裁のニコラウス・バッハラーが登壇。三連休の中日の夕方、しかも台風の影響で天候も荒れ模様だったにもかかわらず、驚くほど大勢のメディア関係者・ジャーナリストが出席していた。豪華キャストがそろっていたが、取材陣の関心はもっぱらキリル・ペトレンコに集中。まあ、しょうがない。バイエルン国立歌劇場の音楽総監督であり、次期ベルリン・フィルの首席指揮者が、今回ようやく初来日を果たしたのだから。しかもメディアからの個別インタビューはすべて受けていない。「これは日本に限った話ではなく、欧州でもどこでもマエストロはインタビューは受けない」(バッハラー総裁)。もうこの会見以外でペトレンコの声を聴くチャンスはないといった状況。
●オーケストラ・コンサートを終えた直後の会見とあって疲れていたとは思うが、ペトレンコはにこやかな、しかしはにかんだような表情で登場。「初めて日本に来ることができてうれしく思う。日本に来て4日目になるが、とてもすばらしい国だと感じている。特に食事が本当においしい」といった挨拶から始まった。挨拶以外にペトレンコが語った言葉はそれほど多くはない。印象に残ったのは指揮に対するモットーとして挙げたこんな言葉。「私はどんなリハーサルでも公演でも、十分な準備をして真摯に立ち向かいたい。もっとも大事にしているのはリハーサル。リハーサルでオーケストラとひとつになることができれば、本番では指揮者がなにもせずに済むのがいい」。そのペトレンコのリハーサルについて、歌手からは「リハーサルにはだれのためにもならないリハーサルと、多くを学べるリハーサルがある。ペトレンコのリハーサルは後者。そしてそのリハーサルが本番につながる」(フォークト)、「これほど楽譜をよく読む指揮者はいない」(ゲルネ)。
●インタビューを好まないことについて、ペトレンコははこう語る。「いちばんの理由は、自分の仕事についてきるだけ語らないほうがよいと思うから。指揮者の仕事は指揮台で伝えるもの。それに、私の仕事には秘密があったほうがよいのです」
September 19, 2017