●かつてイングランドのフットボール・スタジアムではフーリガンたちが猛威を振るっていた時代があった。でも、近年はスタジアム内での暴力事件のニュースをめったに聞かない。どうやってフーリガンを抑え込んだのか。いろいろ理由はあるのだろうが、よく指摘されるのは、観戦チケットの価格が容赦なく上がったからという話。じゃあ、今はいったいいくらなのか。
●プレミアリーグのアーセナル(ロンドン)を例に見てみよう。チケットは対戦相手の人気によって何種類かのカテゴリーに分けられる。たとえば11月、トッテナム戦は最上級のカテゴリーAに設定される。いちばん高価なUpper TierのCentre Upper Backで97ポンド、いちばん安価なLower TierのGoal Lowerで65.5ポンド。今はずいぶんポンドが安くなっていて151円/ポンドで換算すると、15,000円から10,000円といったところだ(千円未満四捨五入、以下同様)。えっ、そんなに? ずいぶん高い。サッカーの試合が最安席で1万円って。対戦相手を選べばもっと安くなるだろうか。ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン戦であれば一段下のカテゴリーBで観戦できる。たしかにぐっと安くなる。といっても、最高56.5ポンドから最低37.5ポンドなので、9,000円から6,000円程度。最高席はともかく、最低席が高い。Jリーグだったら2,000円台でも観戦できるよ?
●なるほど、これなら暴れたいだけのフーリガンは来ない。来るわけがない。ていうか、普通のファンだって大変だ。これ、たった1試合の価格なんすよ。しかも諸手数料なしの。そして、そんなチケットが大人気で簡単にはゲットできなかったりする。
●ちなみにロンドン交響楽団のチケットはどうなっているのか。サイモン・ラトルが指揮する9月のストラヴィンスキー/三大バレエの価格を見ると、55ポンドから15ポンド。8,000円から2,000円といったところだ(N響定期と似たようなもの)。最安席で比較するとアーセナルvsトッテナム戦の4分の1以下。リッチな人はスタジアムでサッカー観戦を楽しみ、庶民はオーケストラを聴く。あのフーリガンの荒くれ者どもは、いったいどこにいったのか。コンサートホールでストラヴィンスキーやブルックナーを聴いて、憂さを晴らしているのだろうか?
September 21, 2017