●27日は紀尾井町サロンホールでIIJのベルリン・フィル超高音質ライブストリーミング配信記者説明会&懇親会。これはすでに始まっている企画なのだが、IIJがハイレゾストリーミングサービスPrimeSeatで、ベルリン・フィルの定期公演をDSD 11.2MHz/1bitという超高音質で日本向けにライブ配信している。今回はその概要説明と収録音源の試聴、トークイベントといった形で記者発表会が開催された。一口にハイレゾといっても、いろんなクォリティがあって、DSD 11.2MHzとなるとわが家には再生環境がないので、試聴できるのが楽しみで足を運んだ。細かい説明はここではしないが、通常のCDクォリティ(PCM 44.1kHz/16bit)の帯域が約1.4Mbpsであるのに対して、一般にハイレゾ音源として流通するPCM 48kHz/24bitは約2.3Mbps、同96kHz/24bitは約4.6Mbps、それに対してDSD 11.2MHz/1bitは約22.6Mbps。よくある「ハイレゾ」と比べても桁違いのデータ量になる。
●で、説明会にはIIJの配信事業推進部の冨米野孝徳氏と西尾文孝氏(写真右)、コルグ 執行役員技術開発部の大石耕史氏、そしてOTTAVAのゼネラルマネージャー斎藤茂氏(写真左)が登壇。配信構成についての技術面での解説や、ベルリンでの収録時の舞台裏についてなど、いろいろなお話をうかがった。当サイトをご覧になる方はコンテンツ面への関心がほとんどだと思うが、第1回はヤノフスキ指揮でブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」他が9月17日の午前2時(日本時間)にライブ配信されている。さすがに時差がキツいので、これを聴ける人はほとんどいないわけで、後日、聴き逃し配信が1週間にかけて配信された。リスナー数については「集計中だが、ライブでは80回ほど再生ボタンが押されている。聴き逃し配信は3000回くらい」だとか。これは意外と多いなと思った。というのも、普通これを聴きたい音楽ファンはベルリン・フィル自身が配信しているデジタル・コンサートホールで映像付きで鑑賞できるわけで(音声は圧縮音源)、わざわざPrimeSeatにやってくる人は「ハイレゾで聴きたい」というはっきりした目的を持った人に限られるので。
●気になる今後の予定だが、プレスリリースにもあるように、12月2日のハイティンク指揮のマーラー/交響曲第9番、2018年2月24日のラトル指揮のヤナーチェク/シンフォニエッタ、4月13日のペトレンコ指揮のフランツ・シュミット/交響曲第4番、6月20日のラトル指揮のマーラー/交響曲第6番「悲劇的」と続く。なお、配信はマルチストリームで提供され、11.2MHz/1bitの最高品質だけではなく、5.6MHz/1bitおよびPCM 96kHz/24bitでも配信される。11.2MHz/1bitは厳しくても、この水準のハイレゾなら多くの人が楽しめるはず。
●なお、この日は試聴イベントとして、ヤノフスキ指揮のブルックナー「ロマンティック」から、ほんのほんのほんのほんのほんの一部だけを、11.2MHz/1bitの最高品質とAAC 384kbpsの圧縮音源で比較することができた。再生機材は立派なハイエンドなものが使われていたんだけど、そうだなー、ここが核心なわけなんだけど、感じたことを端的に3つにまとめるとこんな感じかな。1.なるほどここまで高級機材を使うと、最高品質のハイレゾと圧縮音源の差は感じる。薄いベールを一枚外したかのようなクリアさ、奥行き感、強奏時の雑味のなさ、といったところに差を感知できるかもしれない。 2. これほどの高級機で最高品質のハイレゾを聴いても、好きな音かと言われるとぜんぜんそんなことはない。当然のことなんだけど、このレベルでは音源データのクォリティよりも再生機材(主にスピーカー)の音のキャラクターのほうが、はるかに大きな違いをもたらす。 3. 矛盾するようだが、高品質のオーディオはコンサートホールの客席では絶対に体験できない臨場感(≒音源への近さ)をもたらしてくれる一方、「まるで客席にいるかのような」錯覚は決して起きない、ってことかな。再生芸術はライブとは別種の大きな喜びをもたらしてくれるもの、という日頃からの認識に変わりはない。ハイレゾの広まりは全面的に歓迎なんだけど、その魅力を伝える際の言葉の使い方には細心の注意を払わねば。
September 28, 2017