October 2, 2017

アンサンブル・ウィーン=ベルリンを彩の国さいたま芸術劇場で

彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール●30日は彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールでアンサンブル・ウィーン=ベルリン。もともとウィーン・フィルとベルリン・フィルのメンバーを中心に設立された木管五重奏団だが、2014年からは完全にメンバーが若返って以下のような現メンバーに。フルートのカール=ハインツ・シュッツ(ウィーン・フィル)、オーボエのジョナサン・ケリー(ベルリン・フィル)、クラリネットのアンドレアス・オッテンザマー(ベルリン・フィル)、ファゴットのリヒャルト・ガラー(ウィーン交響楽団)、シュテファン・ドール(ベルリン・フィル)。初代メンバーに比べると「ベルリン・フィル度」が強くなったともいえるが、ウィーン勢vsベルリン勢と見ると、どうだろう。オッテンザマーは所属はベルリン・フィルだけど出自はウィーンの名門一家ということで半々にカウントすると、うまい具合に2.5対2.5でバランスしているともいえる。
●曲はすべて20世紀作品。ツェムリンスキーの「ユモレスク」、バルトーク(マーク・ホプキン編)のルーマニア民俗舞曲、ヒンデミットの「小室内音楽」op24-2、リゲティの「6つのバガテル」、ドビュッシー(ヨアヒム・リンケルマン編曲)の「子供の領分」、フランセの木管五重奏曲第1番、ベリオの「オーパス・ナンバー・ズー」(作品番号獣番)。みんなが知っているような曲はほとんどなく、曲目としてはけっこう渋めなわけだが、まったく無問題。全席完売。スーパースターたちの演奏に接しようと多数つめかけた中高生たちが固唾をのんで舞台を見つめている感。レ・ヴァン・フランセ公演でもそうだけど、木管五重奏での客席の若さと熱気は頼もしいかぎり。
●「ユモレスク」、晩年のツェムリンスキーにこんなとぼけた雰囲気の曲があったとは。ユーモアという意味ではヒンデミットとフランスの曲もユーモラス。というか、ベリオやドビュッシーもそう。プログラム全体を貫くトーンがユーモア。「子供の領分」ではピアノ曲を木管五重奏に割り振る編曲の妙を楽しむ。各楽器のつなぎ目のなさに感嘆。リゲティ作品はピアノ曲「ムジカ・リチェルカータ」からの作曲者自身による抜粋編曲。ベリオの「オーパス・ナンバー・ズー」(作品番号獣番)は、演奏の合間に各奏者のナレーションが入るわけだが、なんと、これが谷川俊太郎の日本語訳。全員、日本語で、しかも表情豊かに読んでくれた。すばらしすぎる。もっとも言葉はけっこう肝心なところが聞き取れなかったのだが……。発音の敢闘賞はジョナサン・ケリーに。アンコールにブリッチャルディの「セビリアの理髪師による幻想的なポプリ」から、それとベリオの「オーパス・ナンバー・ズー」より「ねずみ」をもう一度。

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