●3日はすみだトリフォニーホールで「クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス2017」。クリスチャン・ヤルヴィ(パーヴォの弟、ネーメの息子)が新日本フィルを指揮する一公演に「サウンド・エクスペリエンス」という題が付いているのは、「これまでのコンサートとはまったく異なる新しいアプローチを通じて、パーソナルかつエモーショナルな体験を聴衆に提示する」(クリスチャン・ヤルヴィ)から。プログラムは前半にクリスチャン・ヤルヴィ自身が作曲した「ネーメ・ヤルヴィ生誕80年のためのコラール」(日本初演)、フランチェスコ・トリスターノ作曲のピアノ協奏曲「アイランド・ネーション」(日本初演、ソロはもちろん作曲者自身)、後半にワーグナー~デ・フリーヘル編曲の「ニーベルングの指環」オーケストラル・アドベンチャー。
●前半はそれぞれ自作自演の曲が並んだことになる。父兄弟の3人がそろって世界的指揮者というヤルヴィ家のクリスチャンが父を讃える祝祭的な家族の肖像で幕を開け、続いてフランチェスコ・トリスターノが登場。以前の記者発表にあったように、ピアノ・パートの多くが即興という協奏曲。なのだが、これはなんて形容すればいいのかなー、オーケストラを使ったテクノ? クラシックしか知らない自分にはうまく表現できないんだけど、クラブ・ミュージック? たぶん、これはじっと客席に座って耳を傾けるという音楽ではなく、椅子を取っ払って立ち上がって体を動かしながら楽しむような音楽じゃないかって気がする。しかしここはコンサートホール、お客さんたちは微動だにしない。延々と曲が続いて、最後の最後になってクリスチャン・ヤルヴィが客席を向いて熱く激しく両手を叩いたら、堰を切ったように手拍子が始まって……すぐに曲が終わった。なんだか、自分らノリが悪くて、うまく「サウンド・エクスペリエンス」できなくてスマン!って感じだ。これ、客席はどういう振る舞いが期待されていたんだろ。「ラデツキー行進曲」みたいになってしまってゴメン。なんにせよ、客席で率先してなんらかのアクションを起こすのは難しいものではある、昨今コンサートホールで激高する人々をたびたび目にしているので。アンコールにフランチェスコ・トリスターノのソロ、2曲。「パストラル」と「ラ・フランシスカーナ」。
●後半はワーグナー~デ・フリーヘル編曲の「ニーベルングの指環」オーケストラル・アドベンチャー。これは以前よりある編曲だが、クリスチャン・ヤルヴィの目指すところは重厚長大でズシリとお腹に響くような伝統的なワーグナーとはまったく違う。事前にバルト海フィルハーモニックとの録音を耳にして期待したのは、歯切れよく、タメない引きずらないワーグナーであり、もしかすると前半の音楽につながるようなダンサブルなくらいに躍動感あふれるワーグナー。半ば期待通りだけど、もっとその先があったはずという感も。
●プログラムノートといっしょに配布された紙片に予告あり。「クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス2019」詳細近日発表とか。すみだトリフォニーホールのFBページによればマックス・リヒターが来日するそう。
November 6, 2017