November 20, 2017

ソヒエフ&N響のプロコフィエフ「イワン雷帝」

イワン雷帝●17日はNHKホールでトゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団によるプロコフィエフ(スタセヴィチ編)のオラトリオ「イワン雷帝」。ソヒエフとベルリン・ドイツ交響楽団の録音がソニーから出ているが、ライブではまったく聴いたことのない曲。これは貴重な機会。もともとエイゼンシテイン監督による映画「イワン雷帝」のためにプロコフィエフが書いた音楽を、作曲者の没後にアブラム・スタセヴィチがオラトリオに編曲した。東京混声合唱団(かなり大編成だったが)、東京少年少女合唱隊にメゾ・ソプラノのスヴェトラーナ・シーロヴァ、バリトンのアンドレイ・キマチが加わるという一大スペクタクル(独唱陣の出番が少なくてもったいない)。しかし、ソヒエフは大音響で圧倒しようというのではなく、響きのバランスを美しく保ちながら、ていねいに作品を彫琢するといった趣き。約70分、休憩なしでこの一曲のみだが、ボリュームは十分。
●で、今回の公演では語りとして歌舞伎俳優の片岡愛之助が起用されたのが大きな特徴。もともと映画音楽でありストーリー性はあるのだが、なじみの薄い題材だけあって曲だけ聴いていても、なかなかストンと腑に落ちない。そこに日本語の語りが入ることでイワン雷帝の人物像がはっきりと浮かび上がってくる。というか、これがもう身振り手振りも交えての思い切り芝居がかった語りで、ほとんど主役級の大活躍。この語りでずいぶん救われた気がする。エイゼンシテインが二代目市川左團次率いる一座によるソ連初の歌舞伎公演を観劇し、その影響として映画「イワン雷帝」に歌舞伎の所作を思わせるカットが多数用いられることになった、という歴史的経緯を念頭に今回歌舞伎俳優が起用されたということなのか。

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