●2日はサントリーホールでジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。いつもながらノットのプログラムはおもしろくて、前半にリゲティのホルンと室内アンサンブルのための ハンブルク協奏曲(ホルン:クリストフ・エス)、シューマンの4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック(ソロ:ジャーマン・ホルンサウンド)、後半にベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」というホルン大活躍プロ。ジャーマン・ホルンサウンドはクリストフ・エス、シュテファン・ショットシュテット、ゼバスティアン・ショル、ティモ・シュタイニンガーの4人の同門のホルン奏者からなるアンサンブル。4人がぴたりと調和してひとつの音楽を奏でる。シューマンのこの曲、以前にも聴いたことはあるけど、4人もソロがいるのにソリスティックではない変な曲だなーと思っていたんだけど、4人ホルンをひとつのパートくらいに見ればいいのかも。小協奏曲でもあり小交響曲でもあるような、鬱屈とロマンが一体となったくすんだシューマン・ワールド。なんとアンコールがあって、ブルックナー(M.ヒルツェ編)の4本のホルンのための3つのコラールよりアンダンテ。
●後半の「英雄」はスリリング。弦楽器が14型と小ぶりの編成(いつもの対向配置)なんだけど、その分、全力を振り絞って弾き切ることで初めて成立するようなエネルギッシュなベートーヴェン。ところどころにノットからの仕掛けがあって、これにオーケストラが応えるといった丁々発止のやり取りが(たぶん)あって、あえて端正な造形を拒むかのようにキリキリと軋みをあげながら猛進する。つい先日、ヤノフスキとN響でおそろしく完成度の高い「英雄」を聴いたばかりだけど、ノットはまったく別のアプローチで今まさに目の前で音楽が生み出されているという体験を提供してくれた。客席は大喝采で、ノットのソロ・カーテンコールに。定期公演で、しかもマーラーやブルックナーの大曲でもなく、ベートーヴェンの「英雄」でソロ・カーテンコールが起きるのは珍しいのでは。この日、オクタヴィアによるレコーディングが入っていた模様。どこまでこの興奮が録音で伝わるか興味深いところ。
●休憩中にロビーに黒山の人だかりができていて、なにかと思ったらジャーマン・ホルンサウンドの4人が現われて大撮影大会に。これはよくわかる。というのも、コンサートでは演奏中以外であっても撮影するチャンスがほとんどなく、せっかくコンサートに行ってもインスタ的な意味で「お土産」がない。みんなしょうがなくホールの外観とか公演ポスターとかの写真を撮ってSNSに載せてるわけだけど、それって行ってなくても撮れる写真ばっかりで、一抹の寂しさが残る。というわけで、自分も喜んで撮った。
December 4, 2017