●さて、EAFF E-1サッカー選手権が開幕したんである……が、なんだそのEAFF E-1って? この大会、名称がどんどん変わっていくのだが、以前は東アジアカップと呼ばれ、その前には東アジア選手権とも呼ばれていた気がするし、ルーツをたどればダイナスティカップ(当時弱小国のニッポンがオフト監督のもと初めて国際タイトルを手にした大会)にまで遡る。日本と北朝鮮と韓国と中国の東アジア勢でタイトルを争う。今回は日本の味スタで開催中。
●ただし、この大会は東アジアローカルな日程で組まれたもので、インターナショナル・マッチデイとは同期していない。欧州リーグ戦は休みにならないので、基本的に国内組で代表を組むことになる。おまけにFIFAクラブワールドカップに出場する浦和の選手が呼べない。だから形式上はA代表だけど、ベストメンバー1チーム分くらいを除いた選手たちによる代表というか、実質的にB代表くらいの感じだ。ってことは……そうだな、少しおもしろそう。今のニッポンのJリーグ勢の水準でどこまでできるかを知る好機。ちなみに前回大会はニッポンは一勝もできずに終わった。
●で、メンバーは新鮮。GK:中村航輔-DF:室屋、谷口彰悟、昌子、車屋-MF:今野、井手口、高萩(→伊東純也)-FW:倉田(→阿部浩之)、小林悠、金崎(→川又)。復帰組と元五輪組が目立つ。若い選手が多いなかでベテラン今野が起用されているのがおもしろいところ。川崎の阿部浩之は28歳で代表初選出、初キャップ。で、こうして即席チームを作ってプレイすると、やっぱりニッポンはパスをつなぐサッカーになる。北朝鮮が堅守速攻を目指した戦い方を選んだこともあり、パスは横につながるけれど、縦にはなかなか入らず、ボール支配率ばかりが高くチャンスの少ない展開に。アジアでは毎度おなじみの展開にやっぱりなってしまう。ボールをサイドに運んで前が詰まると逆サイドに動かして、また前が詰まると逆サイド……みたいな。前線で小林悠がしきりにボールを呼び込む動きをしていたようだが、所属チームのようにはいかない。シュートが遠い。
●一方、北朝鮮代表はむしろハリルホジッチ監督が好みそうな効率的なサッカー。平均身長180cm超の高さと強さのある選手たちをそろえ、球際の争いに強く、ボールを奪うと素早くカウンターアタック。この戦術がぴたりとハマって、たびたび決定機を作り出していた。中村航輔のファインセーブで救われた。全体に力強さではニッポンを上回り、技術も予想以上にある。ただし攻守の切り替えや決定機など、ここぞという場面で技術的なミスが出てしまう。北朝鮮の監督は元ノルウェー代表フォワードのヨルン・アンデルセン。外国人監督を迎えたのが意外だが、だが、実はサッカー界に関して言えば北朝鮮はそんなに「閉じた国家」でもなくて、海外組も何人かいる模様。日本と同じく今回欧州組は呼べないわけだが、在日コリアン組は呼べるわけで、カマタマーレ讃岐のリ・ヨンジ(李栄直)が先発出場。J2讃岐ではレギュラーポジションを取れていない選手だが代表では中心選手になっているようで、このあたりは日本代表の選手が海外移籍した場合にまま見られるのと似た現象。ほかに熊本のアン・ビョンジュン(安柄俊)、町田のキム・ソンギ(金聖基)が代表入り。仙台のベテラン、おなじみリャン・ヨンギ(梁勇基)は招集されず。
●90分を通して、ニッポンはボールを回すばかりで決定機が乏しく、チャンスの質でもシュート数でも北朝鮮が上回ったゲーム。0対0で終わるかと思えたが、アディショナルタイムもそろそろ終わろうかという後半48分、スルーパスに抜け出た川又が左サイドからファーサイドへ高いクロスボールを入れ、これを今野が慎重で頭で中に落とし、中央で井手口が豪快に蹴り込んだ。ボールは相手選手にかすって、そのままゴールへ。1対0で劇的な幕切れ。ニッポンの収穫はキーパーの中村航輔だが、ホームで北朝鮮と試合をしてキーパーが目立ってしまう展開は厳しい。伊東純也の縦への突破力は魅力。先発で見たい。
December 11, 2017