●8日はサントリーホールで井上道義指揮日本フィル。ラヴェル「マ・メール・ロワ」組曲、八村義夫「錯乱の論理」(ピアノに渡邉康雄)、ベルリオーズ「幻想交響曲」という錯乱プログラム。八村義夫「錯乱の論理」の曲名の由来となった花田清輝の評論集についてはなにも知らないのだが、「幻想交響曲」での主人公が錯乱し破滅に至るというストーリーと結びつけて、ひとつの大きな流れを読み取ることができる。そしてこれを「マ・メール・ロワ」のおとぎ話で始めるのがおもしろい。終曲「妖精の園」に続いて(舞台転換には時間がかかるが)「錯乱の論理」が始まったところで、同じ世界を表から裏に回って見つめ直したかのような印象を受ける。情念渦巻く「幻想交響曲」はまれに聴く大轟音。
●定期演奏会では珍しく、最後にマエストロがマイクを持って登場し、あいさつ。日本のプロオーケストラの定期演奏会デビューが日フィルでこの「幻想」だったそうなのだが、オーケストラに向かってそのときにもいた人は?と尋ねると、ひとりかふたり反応があって(よくわからなかった)「オーケストラってこれくらい人が入れ替わるんです」。40年も経てばそれはそうか。本来「幻想」はもっと若い指揮者の振る作品だから、最近はあまりやっていなかったというお話も。トークで一段と会場は盛り上がった。
December 12, 2017