●27日は東京オペラシティでベートーヴェン「第九」で今年の聴き納め。といっても普通の公演ではなく、ソニー音楽財団による小中高校生のための「第九」。山田和樹が縁のあるふたつのオーケストラ、仙台フィルと読響の合同オーケストラを指揮する一夜限りの「第九」。それだけでも十分に注目される公演だが、この日の客席は小中高校生とその親御さんでぎっしり。普段の演奏会とはまったく雰囲気が違う。小中高校生といっても、やっぱり多いのは小学生か。けっこう低学年が多い。だんだん大きくなると親と一緒には来てくれないということか。
●ソニー音楽財団では子供や若者たちに向けて継続的にさまざまな公演を企画していて、自分もよくプログラムやウェブサイトに原稿を書かせてもらっている。なので、純粋に「第九」を聴きたい気持ちに加えて、実際に客席に来ている人たちがどうなのかを確かめたくて足を運んだ。子供たちの様子を一言でいえば「行儀がいい」。すごい。本当に感心した。「第九」って、ぜんぜん聴きやすくもないし、やさしくもない曲じゃないすか。あの重々しくて長い第1楽章だけで子供は退屈して、駄々をこねだすんじゃないか、なんて思ってたらそんなことはない。いや、退屈はしてると思う、大方は、確実に。男子中学生くらいだと「けっ、こんなところに連れてきやがって」くらいのノリの子も絶対いる。でも少なくとも70分、静かにしている。もしかすると、慣れすぎたベテランだらけの客席より張りつめた空気が醸成されていたかも。
●18時から仙台フィルメンバーによるロビーコンサートがあって、開演は18時30分。といっても前半はマエストロの15分のトークのみ。鍵盤ハーモニカ持参で「第九」について解説。かなり高度な内容も含まれ、もりだくさん。休憩をはさんでから「第九」。合唱は東京混声合唱団と武蔵野音楽大学合唱団。男女別に分かれていなくて、各パートばらばらに並んでいた模様。オペラシティの舞台いっぱいにオーケストラと合唱がひしめき合う大編成で、とてもパワフル。客席のいつもと違った緊張感が舞台上にも影響してか、「これが第九だ!」といわんばかりの雄弁で起伏に富んだベートーヴェン。やはり終楽章で声楽が入ると、客席に「はっ」とした雰囲気が生まれる気がする。最後、熱狂的なコーダが終わるやいなや大歓声が上がったのは吉。ビバ、若い反射神経。
●開演前にマエストロが「第九を生で初めて聴く人は手を挙げて~」と言ったら、大半の人を手を挙げた。こういった機会は貴重。子供はこれですぐにクラシックを好きになったりはまずしないが、過去に一度でも経験があるとないとでは、大人になってから関心を払う率はぜんぜん違ってくるはず。あと、見逃せないのが親御さんで、小学生だと親の年代でも通常のオケ定期基準でいえばまだまだ「若い人」なので、子育てが一段落ついた頃に「帰ってくる」人も少なくないんじゃないだろうか。
December 28, 2017