●「このミス」で上位に入っているのを見て年末年始に読んだ「いくさの底」(古処誠二著/KADOKAWA)なんだけど、なんとなく気になって、途中から拾い読みで再読してしまった。とてもよくできたミステリで、再読すると「あ、なるほど、だからここはこんなふうに書かれていたのね」ともう一度味わうことができる。舞台は第二次大戦中のビルマの小村。この山岳地帯の村に警備駐屯することになった日本軍に、通訳として主人公の民間人が同行している。隊の少尉が何者かによって殺され、いったいだれがなんのために、というところから話がスタートする。戦時下の特異な状況を背景にした謎解きが鮮やかで、戦争小説としてもおもしろい。血なまぐさい戦闘シーンは一切なく、むしろ戦闘が起きていないときの戦場の描き方として秀逸。
●特異な状況を設定して閉鎖的な人間集団を描くという点では先日の「屍人荘の殺人」と同じなんだけど、あちらがジャンル小説のパロディ的な装いをまとっているのに対して、こちらは真に迫ったタッチ。実質的な探偵役ともいえる「副官」が、ずっと物語の背景にいたまま真相に迫るという趣向も吉。
January 24, 2018