●2日夕方は東京芸術劇場で藤倉大記者懇談会。現在大活躍中の作曲家だけあって話題はもりだくさん。会見翌日に行われた芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー第4回演奏会でテューバ協奏曲の世界初演があり、9月には東京芸術劇場でアーティスティック・ディレクターを務める「ボンクリ・フェス2018」があり、10月にはHakuju Hall開館15周年記念「藤倉大個展」があり、さらに同月、東京芸術劇場コンサートオペラとしてオペラ「ソラリス」日本初演が行われる。Hakuju Hallの公演は4月18日に詳細情報が公開されるそうなので、以下「ボンクリ・フェス2018」と「ソラリス」について。
●「ボンクリ」とはBorn Creative、つまり人は生まれながらにして創造的、という意味。現代音楽あり、電子音楽あり、合唱あり、パーカッションありと、赤ちゃんからシニアまで一日中楽しめるワンデイ・フェスティバル。昨年に続く2回目の今回は開催時期を変えて9月24日に行われる。スペシャル・コンサートとしてアンサンブル・ノマドや東京混声合唱団、ヤン・バング、アイヴィン・オールセット他が出演。メシアン、エトヴェシュから大友良英、坂本龍一まで。藤倉大作品としてはチェロ協奏曲(独奏:カティンカ・クライン)が演奏される。また、シンフォニースペースではさまざまなワークショップも開催。なお、コンサートホールに入場できない未就学児連れのために「スクリームの部屋」が設けられ、スペシャル・コンサートが同時中継される(要保護者同伴)。
●もうひとつ、オペラ「ソラリス」は2015年にシャンゼリゼ劇場で世界初演された作品で、今回が日本初演。演奏会形式、日本語字幕付き英語上演。「ソラリス」は最近NHK Eテレの「100分 de 名著」でも取り上げられたスタニスワフ・レムによる古典的SF小説(当ブログでも話題にしている)。タルコフスキーらの映画でも知られるが、藤倉さんが触発されたのは小説のほう。佐藤紀雄指揮アンサンブル・ノマドの演奏で、配役はクリス・ケルヴィン役にサイモン・ベイリー、ハリー役に三宅理恵。ケルヴィン役にはもうひとり「オフステージ」としてロリー・マスグレイヴが配されている。これはクリスの言動の不一致を表現するための仕掛けなんだとか。世界初演の際は勅使川原三郎の演出とダンスがあったが、「作曲家としては、演奏会形式でもぜんぜん成立すると思って書いている」「5月にアウグスブルクで再演されるが、そちらでもダンサーはいない」。また、「ソラリスは演劇よりも音楽のほうが表現しやすいテーマだと思った」とも。原作は、知性を持った海で覆われた惑星を訪れた科学者たちが、絶対的に理解不能な現象と出会い、知の限界に突き当たりながらやがて人間存在の意味について問うといった内容。「100分 de 名著」が最高の予習(あるいは原作の復習)になっている。
March 6, 2018