●6日はBunkamuraオーチャードホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響によるバーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」(演奏会形式)。バーンスタイン生誕100周年を記念して、バーンスタインを師と仰ぐパーヴォが「ウエスト・サイド・ストーリー」を指揮。マリアにジュリア・ブロック、トニーにライアン・シルヴァーマン、アニタにアマンダ・リン・ボトムス、リフにティモシー・マクデヴィット。ジェッツとシャークスは東京オペラシンガーズ、ガールズは新国立劇場合唱団。N響はゲストコンサートマスターにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のヴェスコ・エシュケナージ。
●曲が圧倒的にすごい。ひとつの作品にこれだけの名曲が詰まっているとは。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、ビゼーの「カルメン」に匹敵するくらいの名曲密度。天才すぎる。特に「トゥナイト」の五重唱に戦慄。甘いロマンスと絶望的な暴力の前触れがいっしょに歌われるというヴェリズモばりの残酷さ。今回は「シンフォニー・コンサート版」と銘打たれていて、セリフは最小限にして、どんどんと音楽を聴かせるスタイルで正味1時間半(+休憩30分)。しかもパーヴォのテンポ設定がキビキビとしたものだったこともあり、スピーディな展開に。
●歌はPAありなんだけど、やはりシンフォニー・オーケストラが演奏すると格調高いというか、全体としてはクラシカルで重厚な「ウエスト・サイド・ストーリー」。演奏会形式なので、オラトリオ「ロメオとジュリエット」とでもいうか、あるいはオラトリオ「トニーとマリア」、いや(ふたりの本来の名前の)「アントンとマルーカ」か。東欧系とプエルトリコ系。これって移民の話なんすよね(あ、今年のラ・フォル・ジュルネにぴったりの曲だ)。下敷きとしたシェイクスピアの「ロメオとジュリエット」で、モンタギュー家とキャピュレット家の対立が背景にある以上、これを20世紀アメリカに翻案したら出自の違いがこのように置換されるのはまったく自然なことではあるわけだけど、結果的に今日的なテーマになっているのかも。一方で、「ロメオとジュリエット」題材の音楽としては、プロコフィエフ直系の子孫という気もする。
●平日昼間の公演だが、客席はしっかり埋まっていた。感動を伝える客席からの声が「ブラボー!」と「ヒューヒュー!」みたいな両方の流儀があって、これもバーンスタインならでは。
March 7, 2018