March 8, 2018

ダニエル・ゼペック ― 無伴奏

●7日はトッパンホールでダニエル・ゼペックの無伴奏ヴァイオリンによるリサイタル。ゼペック、これまでにアルカント・カルテットやドイツ・カンマーフィルのメンバーとしては聴いていると思うが、ソロを聴いたのは初めて。しかも無伴奏ということで、プログラムが抜群におもしろい。前半にテレマン「12のファンタジー」第9番ロ短調、ベリオ「セクエンツァ」第8番、ビーバー「ロザリオのソナタ」第16曲 パッサカリア、後半にアカ・ピグミー族の伝承音楽「ボッソベ」(録音)~ライヒ「ヴァイオリン・フェイズ」、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調。プログラムのテーマは反復と変奏(あるいは漸次変化)といったところか。プログラム全体がひとつの作品であるかのよう。しかもそれでいてバロックから現代、さらには民族音楽まで含めてしまうという振幅の大きさは圧倒的。時空を飛び越えながら、終着点のバッハ「シャコンヌ」に向かってゆく。柄物のシャツでフラッとステージに出てくる感じもカッコいい。
●後半は、当日に追加曲として発表されたアカ・ピグミー族による伝承音楽「ボッソベ」がスピーカーから流れ(ゼペックは舞台に立って聴いているだけ)、これが終わるとそのままライヒの「ヴァイオリン・フェイズ」につながる。事前録音されたヴァイオリン・パートで「ヴァイオリン・フェイズ」が始まって、しばらくするとようやくゼペックの演奏が加わるという趣向。ミニマル・ミュージックとの共通性から「ボッソベ」を置いたという奏者のメッセージがプログラムに挟まれていた。舞台上にスピーカーが設置されていたけど、PAはとても自然ですばらしい。最後はバッハ。用意周到に敷かれた「シャコンヌ」への道。しかしバッハが始まってしまうと、それまでの伏線がぜんぶ背景に霞んで、ひたすらバッハの音楽にフォーカスしてしまう感も。音楽の大きさというか、種類が違うというか、端正ではあるけれどエモーショナルであるというか。最後にアンコールで弾いたのがカプスベルガーの「アルペッジャータ」。ゼペックは日本語で曲名を案内してくれた。リュート曲からの編曲で、これもアルペジオが連続してミニマル・ミュージックともどこか通じる反復の音楽であるという、プログラム全体に沿った選曲。鮮やかな幕切れ。

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